(図解)簡単に理解できるDX「電子帳簿保存法」の概要 ~ペーパーレス化の推進~
【難易度★★★☆☆】

会計士

今回は経理部門のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の一環として、よく話題に上がる「ペーパーレス化」について解説を進めていきます。

本記事では「ペーパーレス化」の1つのトピックである「電子帳簿保存法」について解説をしていきます。

「電子帳簿保存法」とは?

電子帳簿保存法

「電子帳簿保存法」とは、紙での保存が求められる国税関係帳簿書類について、電子データでの保存を認める法律のことをいいます。実はかなり古くからある法律なのですが、最近急速に改正が進み、電子化を進める企業が増えてきています。

相談者

分厚いファイルから過去の書類を探すだけで一苦労なので、書類を電子化すると様々なメリットがありそうです。

会計士

そうですね。「書類の電子化(ペーパーレス化)」を進めることで、以下のようなメリットが見込めます。

電子化のメリット
  • コストの削減
    ⇒事務用品、キャビネや倉庫等の保管コスト、作業時間の削減が期待できます。一方で、導入のためのコストや、ランニングコスト(システム費用等)が生じる点は留意が必要です。
  • ガバナンスの強化
    ⇒データベース上で関連資料を見ることができるため、内部統制の観点からガバナンスの強化が期待できます。
  • リモートワークの推進
    ⇒紙資料の削減により、出社が必要な業務が減ることで、リモートワークの推進が期待できます。副次的な効果として、優秀な人材に向けてのアピールとなることも見込まれます。
電子帳簿保存法

保存するデータの種類

データの種類

一口に「電子化」といっても、以下の2パターンでデータが保存されることになります。

  1. 電子データによる保存
    ⇒自社で作成する帳簿や、自社システムで作成したデータ等を電子データとして保存する
  2. スキャンによる保存
    ⇒他者から紙で受領した書類をスキャンし、PDF等の電子データで保存する
相談者

他者からもらった「領収書」や「請求書」はスキャンが必要なんですね。

2020年の改正によって、他者から受領した電子取引データ(交通IC系の取引やQRコードの取引データ等)については、電子データによる保存が認められ、領収書等のスキャンは不要となりました。

データの種類(改正後)

電子取引データの保存が認められたことから、以下の3パターンとなりました。

  1. 自社で作成された帳簿等、書類(電子データ)
  2. スキャナ保存
  3. 電子取引データ(交通系ICやバーコード決済の取引データ)
(国税庁資料より抜粋)

上図は以下のページより引用しております。

令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

適用のための要件

相談者

電子帳簿保存法を適用するためには、複雑な要件があると聞いたことがあります。

会計士

そうですね。要件は非常にややこしいのですが、年々緩和されている傾向にあります(政府がペーパーレス化を推進しているためです)。

適用要件

電子帳簿保存を適用のためには、以下の2つの要件が求めれています。 

  • 真実性:データが改ざんされないようにすること
  • 可視性:読みやすいようにすること、検索できるようにすること

具体的には、タイムスタンプ(スキャンした日付のスタンプ)を付与する、バージョン管理を行う(データが上書きされないようにする)、解像度の高いスキャナーを使う(ガラケーはNG、スマホはOKのようなイメージ)、取引名や相手先等の情報を帳簿と紐づけるといったことが要求されています。

理解のためにかみ砕いた表現にしていますので、詳細は国税庁のHPもご参照ください。

国税庁HP 電子帳簿保存法関係
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm

相談者

「電子帳簿保存法対応」と謳っているソフトウェアを見たことがありますが、これらの要件を満たせるようなソフトのことを言っていたんですね。

会計士

そうですね。ただ、ソフトを使うことによって簡単に電子帳簿保存法を適用できれば良いのですが、今までは、業務プロセスもしっかりと整備しないといけなかったため、中小企業や個人事業主にはハードルが高かったんです。

要件の緩和(2021年改正)

電子帳簿保存法を適用するためには、非常に細かい要件(税務署の事前承認、XX日内にスキャンしないといけない、署名が必要、タイムスタンプが必須、チェック体制の整備、規程類の整備等)をクリアしないといけなかったため、大企業以外は導入が進んでいないという実態がありました 

一方、政府としては、中小企業等にもペーパーレス化を推進してほしいという思惑があったことから、2021年に改正が行われ、これらの各種要件が緩和されることになりました。そのため、今後は、中小企業や個人事業主の間でも導入が進んでいくことが予想されます。

電子帳簿保存法
会計士

要件が緩和されるということは、以前よりもわかりやすい要件に変わっているということでもあります(まだまだややこしいので、さらにわかりやすい要件になっていくことを願います)。

相談者

要件が緩和されれば、少しずつ中小企業や個人事業主でも導入が進んでいきそうですね。

2021年の改正の内容について、以下のサイトが非常に参考になります。https://www.teamspirit.com/ja-jp/backoffice-navi/electronic-book-storage-act.html

また、国税庁のHPもあわせて見てみましょう。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

本記事のまとめ
  • 「電子帳簿保存法」とは、紙での保存が求められる国税関係帳簿書類について、電子データでの保存を認める法律のこと
  • 電子化を進めることにより、①コスト削減、②ガバナンスの強化、③リモートワークの推進といったメリットがある
  • 2021年に改正が行われ、各種要件が緩和されることになり、適用する中小企業や個人事業主が増えることが予想される

電子帳簿保存法を略して「電帳法(でんちょうほう)」といいます。