(図解)簡単に理解できる「四半期報告書」「決算短信」とは ~有価証券報告書との違い~
【難易度★★★☆☆】

相談者

先日「有価証券報告書」について学習をしましたが、他にも決算情報と呼ばれるものがあると聞きました。

会計士

そうですね。有価証券報告書のような外部公表資料は「IR情報」と呼ばれるのですが、今回は「四半期報告書」「決算短信」というIR情報について解説をしようと思います。

「IR情報」とは、Investor Relations情報の略で、投資家向けの情報のことをいいます。
(Investor:投資家、Relations:関係)

「四半期報告書」とは?

会計士

まずは「四半期報告書」について、解説を進めていきます。

四半期報告書

「四半期報告書」とは、3か月に1度作成する法定開示書類のことをいいます。

 従来は、年に1度の決算、または半年に1度の決算しか行っていなかったのですが、タイムリーな決算報告の観点から1年を4つの期間に区切り、3か月に1度の決算をすることが2008年から要求されることになりました。ビジネス環境が激しく変わる時代なので、期間をより細かく分けて決算報告をしてほしいという趣旨から始まった制度です。 

「有報」の親戚みたいなものですが、「有報」よりも情報量は少ないです。「有報」と同様の情報量で、3か月に1度のペースで決算書類を作成することは実務上かなりの負担となるため、「四半期報告書」では、あくまで簡便的な決算報告を行うこととされています

「四半期報告書」では、単体の数字は開示されず、連結ベースの開示のみとされています。

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相談者

「四半期報告書」はどれくらいのページ数なんでしょうか。

会計士

会社によってばらつきがあるのですが、20ページ~50ページ(それ以上の会社もあります)くらいのイメージです。有報が100ぺージ~300ページ程度なので、かなりボリュームが少ないことがわかると思います。

相談者

ボリュームが少ないとはいえ、3か月に1度公表する必要があるのですね。なかなか大変そうです。

会計士

そうですね。以前に比べ、経理部門や監査法人の負担は増加している傾向にあります。

期間の例

「3か月に1度」という点について補足ですが、1年間を4つの期間に区切り、それぞれの期間ごとに開示をすることになります。たとえば、3月末決算の場合、以下のようなイメージです。 

  • 4月~6月:第1四半期(1Q)
  • 7月~9月:第2四半期(2Q)
  • 10月~12月:第3四半期(3Q)
  • 1月~3月:第4四半期(4Q) ⇒ 年度末 

「Q」:クオーターと呼びます。または「キュー(イチキュー、ニキュー、サンキューといった具合)」と呼ぶこともあります。 

「決算短信」とは?

会計士

次に「決算短信」について見ていきましょう。

決算短信

「決算短信」とは、上場会社が3か月に1度のペースで作成する決算速報のことです。

決算速報としての位置づけで、「有価証券報告書」や「四半期報告書」よりも早いタイミングで開示されます。法律で作成が求められるようなものではないのですが、上場している会社は、証券取引所の規程に基づき作成をすることが求められています(上場していない会社では、証券取引所の規程が適用されないため、作成義務はありません)。

規程上、決算日(3月末など)から45日以内に開示することが要求されていますが、30日以内に提出することがより望ましいとも言及されており、各社で決算の早期化に取り組んでいます。

「四半期報告書」や「有価証券報告書」よりも情報量は少なく、決算速報という意味合いが強いIR情報となっています。また、来季の予想値が公表されている点も1つの特徴です。

「決算短信」では、単体の数字は開示されず、連結ベースの開示のみとされています。

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「上場」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

相談者

上場している会社が、証券取引所の規則に基づいて開示するものなんですね。これも監査法人の「監査」の対象になるのでしょうか。

会計士

監査法人による「監査」が要求されるのは、法定開示書類のみです。そのため、「決算短信」は、監査の対象とはなっていません。

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各IR情報の関係について

会計士

最後に、それぞれの書類の関係をまとめていきましょう。

各書類の関係

「有価証券報告書」は、年度末(4Q)に1回、「四半期報告書」は、それ以外の四半期(1Q~3Q)に開示するので、1年に3回、「決算短信」は、各四半期開示する必要があるので、年に4回開示することになります。

なお、「決算短信」は、「四半期報告書」「有価証券報告書」のそれぞれより前のタイミングで開示がなされます。

四半期の場合、「決算短信」も「四半期報告書」も45日以内が期限となっていますが、先に「決算短信」を公表し、その後に「四半期報告書」を開示します

年度末の場合、「決算短信」は45日以内、「有価証券報告書」は3か月以内に開示することが要求されています。そのため、先に「決算短信」を公表し、その後に「有価証券報告書」を開示することになります

年度末には、会社法の「計算書類」というIR情報もありますが、こちらは別記事にて解説予定です。

会計士

最後に、すべての書類の関係をまとめると、以下のとおりとなります。

相談者

開示書類ってこんなに多いんですね。。投資家から見ると、タイムリーに決算情報を見ることができるというメリットがあるのですね。

本記事のまとめ
  • 「四半期報告書」とは、3か月に1度のペースで作成する法定開示書類のこと
  • 「決算短信」とは、上場会社が3か月に1度のペースで作成する決算速報のこと
  • 「有価証券報告書」は、年度末(4Q)に1回、「四半期報告書」は、それ以外の四半期(1Q~3Q)に開示するので年に3回、「決算短信」は、各四半期ごとに開示する必要があるので年に4回開示する