最新のPMBOK(第7版)では「10の知識エリア」という考え方は廃止されています。本記事では「プロジェクトマネジメント」を理解するための参考として10の知識エリアを参考に解説を進めていきます。
本記事は前記事の続きとして「後半の5つの知識エリア」について解説を進めていきます。「①PMBOKとは?」は前回の記事と同様の内容のため、学習済みの方は飛ばしていただいてOKです。
なお、前半の5つの知識エリアについては、以下の記事をあわせてご参照ください。
プロジェクトマネジメントを体系的に学んでみたいと思っていたので気になりますね。
プロジェクトマネジメントは、座学よりも実践あるのみというのが正直なところです。ただ、体系的にプロジェクトの進め方に関する知識を理解したい、いま進めているプロジェクトを見直したいという方は参考にしていただけますと幸いです。
「プロジェクトの進め方」に関しては、以下の記事もあわせてご参照ください。
「PMBOK」とは?
そもそも「PMBOK」とはどういったものか、簡単に解説を進めていきます。
「PMBOK(ピンボック)」とは、「Project Management Body of Knowledge」の略で、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめたものをいいます。
アメリカの「PMI」という非営利団体が作成したもので、プロジェクトマネジメントの世界標準となっています。「PMBOK」自体は具体的なツールや方法論を書いたものではなく、知識として学ぶことを主眼としています。
世界標準となっているんですね。
方法論は書いていないとすると、実務で使っていくのはなかなか難しいですかね。
本記事では「個人的な経験談」を交えて、なるべく実務の参考にもなるようなポイントを解説していきたいと思います(PMBOKはあくまで整理の軸として参考にしています)。
では、解説に入る前に「プロジェクト」の定義を改めて確認しておきましょう。
「プロジェクト」とは、ある期限までに目的やゴールを達成するための活動のことと本記事では定義させていただきます。重要なポイントは以下の2点です。
- 期限があること
- 独自性があること
基本的に「プロジェクト」はチームを組んで進められることが多いですが、目的を達成する(あるいは期限が到来する)ことによって「プロジェクト」チームは解散します。永遠に続くのではなく、終わりがある(有期性)というのが通常の業務との大きな違いです。
また、似たような「プロジェクト」はあるものの、まったく同じプロジェクトは存在しません。目的やゴールの水準が違う、期限が違う、使えるリソース(ヒト、モノ、カネ)の制約が違うといった形で、プロジェクトによって独自性があることも大きな特徴です。
ケースバイケースという感じで、柔軟性が求められそうですね。
そうですね。プロジェクトごとにゴールやリソースが異なることから、これらを適切に管理ことがPMOには求められます。
プロジェクトマネジメントを担当するチーム(担当者)のことを「PMO」と呼ぶことが多いです(「PMO」は「Project Management Office」の略です)。
10の知識エリア(後編)
資源マネジメント
いわゆる「リソースの管理」のことで、プロジェクトで使う「ヒト」や「モノ」の管理がポイントです。
特に「ヒト」に関しては、頭を悩ませている人も多いと思います。
「ヒト」を管理する上でのポイントはなんでしょうか。
1つ目のポイントは「工数計算」です。「FTE(Full Time Equivalent」」という単位で計算することが多いですが、例えば、1FTE=1人/月(1人の人員を1か月フルで使った場合の工数)と計算して、どの程度のFTEが必要になるのかといったことをタスクから積み上げて計算します。
なるほど。単純に何人必要というだけでなく「FTE」という単位で計算するのが良いんですね。
ほかのプロジェクトと掛け持ちで対応する場合に50%分のFTEを積むといった計算もしやすいので、「何人必要」ではなく、「FTE」単位で見積もることを推奨します。
2つ目は「適材適所な人員配置」です。工数計算をするにあたって一般的な工数は計算ができますが、「だれが」作業するかによっても工数は変わります。
また、作業のレベルも個人によって違うので、チームとして最大限のパフォーマンスを出すための人員配置が重要となってきます。
事務作業が得意な人、コミュニケーションが得意な人など、メンバーにはそれぞれ特徴がありますもんね。
コミュニケーション
プロジェクト内外の関係者と適切に「コミュニケーション」をとることも重要なポイントです。後述する利害関係者とのコミュニケーションも含みます。
コミュニケーションというと、定期的に会話をしたりするイメージでしょうか。
そうですね。会話することが必須ではないですが、お互いに認識齟齬がないように情報を適切に伝えるということが一番のポイントです。
- 「提案書」「報告書」を作成し、スコープ等の合意をとる
- 定期的に報告会を実施し、進捗を共有する
- 開始報告、完了報告をメールにて関係者に周知する
- 社内のイントラ(HP)にプロジェクト情報を掲載する
なるほど。「情報伝達」というイメージですね。
そうですね。そのような表現のほうがわかりやすいかもしれません。「だれに」「なにを」伝えるのかを漏れなく整理するといった観点が重要です。
リスク・マネジメント
プロジェクトを遂行するにあたって生じうる「リスク」を管理することもポイントです。
すべてのリスクに対応することは難しいので「優先順位」をつけることが特に重要です。
お客さんに迷惑をかける可能性があるのでリスクが高いとか、そういったことでしょうか。
そうですね。リスクを整理する際には、影響が「社外」か「社内」かというのも1つの整理の軸です。
また、「重要度」「緊急度」「影響範囲」といった軸も利用できるかと思います。
なるほど。社外への影響があるものや、影響範囲が広いリスクは、優先的に対応するということですね。
そうですね。当然ですが、リスクを識別するだけでなく、それぞれのリスクに対して「対応策」を考え、実行することもポイントです。
調達マネジメント
各種リソースを調達する際に、適切な調達プロセスをとることもポイントです。
事前に見積もりをとるとか、そういったことでしょうか。
そうですね。具体的には、相見積り(複数社への見積り依頼)を行うことや、事前に「RFP」を作成し、発注要件を明確にするといったことが求められます。
「RFP」とは、Request For Proposalの略で、各仕入先に提案書の作成を依頼するために事前に要求事項をまとめたものをいいます。
「RFP」の作成は必須ではないですが、複数社から同条件で公平に提案・見積りを受けるために必要となります。
ステークホルダー
最後に、ステークホルダー(利害関係者)を特定し、プロジェクトに協力してもらうこともポイントです。
社長を含めた上司や、コンサルの立場でいえば、クライアントのような人たちでしょうか。
そうですね。1番のポイントとして「意思決定者」を巻き込むことが重要です。
プロジェクトを進めるにあたっては、意思決定の場面が多く発生します。日常的な意思決定は現場責任者が実施することが多いですが、重要な決定事項については、会社の中でも上位の方々が最終的に決定することが多いです。
些細な事項まで上位者が決定するとなると、プロジェクトのスピード感がなくなります。
日常的な判断については、現場責任者に委譲するといった意思決定プロセスの整理も重要です。
逆に現場の責任者の判断だけで進めてしまうというようなこともありますよね。
このような方々を巻き込んでおかないと迅速に意思決定がなされなかったり、最悪の場合には、途中で前提をひっくり返されてしまうといったことも起こりうるので注意が必要です。
今回は、プロジェクトマネジメントを体系的に学ぶことのできる「PMBOK(ピンボック)」の10の知識エリアという内容をを参考にしてプロジェクトマネジメントの基礎を解説していきます。