最新のPMBOK(第7版)では「10の知識エリア」という考え方は廃止されています。本記事では「プロジェクトマネジメント」を理解するための参考として10の知識エリアに沿って解説を進めていきます。
プロジェクトマネジメントを体系的に学んでみたいと思っていたので気になりますね。
プロジェクトマネジメントは、座学よりも実践あるのみというのが正直なところです。ただ、体系的にプロジェクトの進め方に関する知識を理解したい、いま進めているプロジェクトを見直したいという方は参考にしていただけますと幸いです。
「プロジェクトの進め方」に関しては、以下の記事もあわせてご参照ください。
Contents
「PMBOK」とは?
そもそも「PMBOK」とはどういったものか、簡単に解説を進めていきます。
「PMBOK(ピンボック)」とは、「Project Management Body of Knowledge」の略で、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめた参考書のようなものをいいます。
アメリカの「PMI」という非営利団体により作成され、プロジェクトマネジメントの世界標準となっています。「PMBOK」自体は具体的なツールや方法論を書いたものではなく、知識として学ぶことを主眼としています。
世界標準となっているんですね。
方法論は書いていないとすると、実務で使っていくのはなかなか難しいですかね。
本記事では「個人的な経験談」を交えて、なるべく実務の参考になるようなポイントを解説していきたいと思います(PMBOKはあくまで整理の軸として参考にしています)。
では、解説に入る前に「プロジェクト」の定義を改めて確認しておきましょう。
「プロジェクト」とは、ある期限までに目的やゴールを達成するための活動のことと本記事では定義させていただきます。重要なポイントは以下の2点です。
- 期限があること
- 独自性があること
基本的に「プロジェクト」はチームを組んで進められることが多いですが、目的を達成する(あるいは期限が到来する)ことによって「プロジェクト」チームは解散します。永遠に続くのではなく、終わりがある(有期性)というのが通常の業務との大きな違いです。
また、似たような「プロジェクト」はあるものの、まったく同じプロジェクトは存在しません。目的やゴールの水準が違う、期限が違う、使えるリソース(ヒト、モノ、カネ)の制約が違うといった形で、プロジェクトによって独自性があることも大きな特徴です。
ケースバイケースで、柔軟性が求められそうですね。
そうですね。プロジェクトごとにゴールやリソースが異なることから、これらを適切に管理ことがPMOには求められます。
プロジェクトマネジメントを担当するチーム(担当者)のことを「PMO」と呼ぶことが多いです(「PMO」は「Project Management Office」の略です)。
10の知識エリア(前編)
本記事では前半の5つの項目について解説を進めていきます。
- 統合マネジメント
- スコープマネジメント
- スケジュールマネジメント
- コストマネジメント
- 品質マネジメント
統合マネジメント
「統合マネジメント」とは、これ以外の9つの知識エリアを総合的に管理することをいいます。
各項目には依存関係があり、どちらかを優先するとどちらかが劣後する、なにかかが決まるとほかの項目が決まるといったことが起こり得ます。
これらを統合的に管理していくのが統合マネジメントの視点です。
なるほど。全体的なバランスをとる必要があるといったようなことですね。
そうですね。具体的には、リソースの制約を優先すると納期を遅らせざるを得ない、納期や品質が決めれば必要なリソースが決まる等の依存関係が起こりうるので、これらのバランスを適切に管理することが重要です。
プロジェクトに使える「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」のことを「リソース」と呼んでいます。
スコープ・マネジメント
「スコープを決めること」は、プロジェクトのゴールを決めることと同じような意味合いで、非常に重要なポイントです。
プロジェクトでなんでもかんでもやってしまうとキリがありません。そのため、どこまでをプロジェクトで達成するのか、逆にやらないくても良いことはなにかを定義しておくことが重要です。
たしかに、プロジェクトって進めるうちに忙しくなっていって、気づけば必要以上の仕事もやっていたりしますよね。。
そうですね。やらないことを決めるというのは重要で、最初に決めておかないとやることが増えてしまいがちです。
特にコンサル側の立場では、契約時にスコープを明確にしておくことでブラックな職場環境を回避することができます。
なるほど。事前に線引きをしておくようなイメージですね。
そうですね。しっかりと線引きをしておき、後々「期待ギャップ」が生まれないように目線合わせをしておくことが重要です。
スケジュール・マネジメント
リソースの制約の1つに「時間」があります。プロジェクトにおいては、いわゆる「納期」を決めることがポイントとなってきます。
どのように「納期」を決めるのが良いでしょうか。
プロジェクトの目的にもよりますが、「いつまでにXXを達成していないといけない」といったマイルストンがあれば、納期ありきでそれを達成するためにリソースを投入することになります。
明確なマイルストンがない場合は、どうすれば良いでしょうか。
「明確な期限はないが、リソースには限りがある」といった状況であれば、使えるリソースから工数を逆算していつまでに目的を達成できるかといった観点で納期を決めていくことが考えられます。
「統合マネジメント」で触れたとおり、以下のバランスをとることがポイントです。
- 品質(Quality)
- コスト(Cost)
- 納期(Delivery)
コスト・マネジメント
ほとんどのプロジェクトでは、使えるリソースに限りがあるので、コスト管理を行う必要があります(プロジェクトの優先度によっては、ある程度コスト度外視で使えることもありますが、その場合でも採算管理は必要です)。
決められた予算内でプロジェクトを進めないといけないということですね。
そうですね。使えるコストに対して、あまりに高いゴールを設定してしまうと、途中で予算がなくなってしまう可能性があるので、当初から予算が少ない場合にはゴールの水準を引き下げるといったコントロールが求められます(あるいは必要性を説明して予算をあげてもらう必要があります)。
事前にコントロールするのが望ましいですが、プロジェクトを進めていくなかでコストが足りなくなってしまう場合はどうすれば良いでしょうか。。
やみくもに増やしたいといっても予算を増やしてもらえないので、追加予算の必要性を説明する必要があります。最低限、以下の点は説明できるようにしておきましょう。
- 当初の見積もりに含められなかった理由
- 当初の前提と状況がどのように変わったのか
- 追加予算をかけない場合、どのようなリスクが発生するのか
(単純にスケジュールが遅延するのみなのか、顧客等へ迷惑をかけるおそれがあるのか等)
品質マネジメント
「スコープ」とも関連する部分ですが、どのレベル(品質)で目的を達成するのかを定義することもポイントです。
品質最優先であれば、その分リソースは多く必要になります。また、品質よりも納期を優先してスピード重視で進めるケースもあります。
あまりに慎重に進めすぎると時間がかかってしまうので、ある程度の品質でスピードを重視するような考え方もありますよね。
そうですね。ミスが許されないようなプロジェクトでは、品質を高めることにリソースを使うべきですが、そうでない場合はスピード感やコストとの兼ね合いも重要です。
10の知識エリア(後編)
残りの5つの知識エリアについては、別記事にて近日中に解説予定です。
- 資源マネジメント
- コミュニケーションマネジメント
- リスクマネジメント
- 調達マネジメント
- ステークホルダーマネジメント
今回は、プロジェクトマネジメントを体系的に学ぶことのできる「PMBOK(ピンボック)」の10の知識エリアという内容をを参考にしてプロジェクトマネジメントの基礎を解説していきます。