今回の記事では、SAP -FI(財務会計)の中でも利用頻度の高い標準機能をご紹介していきます。
どちらかというと、経理の責任者や監査人など、数字を「チェックする」観点で利用するようなT-codeを中心にご紹介します。
「SAPの基礎」「FIモジュールの基礎」については、以下の記事を合わせてご参照ください。
伝票の「入力」系の機能については、今回は対象外ということですね。
そうですね。伝票の「入力」については、標準機能をそのまま使うケースもありますが、各社でカスタマイズしているケースが多いです。
一方、今回ご紹介する照会・レポート機能については、各社共通で標準機能を利用されることが多いのではと思います。
Contents
GL(勘定科目)系
財務諸表出力(S_ALR_87012284)
「財務諸表出力」では、いわゆる「試算表」のレベルで、全ての勘定科目に対する残高を出力することが可能です。
また、「財務諸表バージョン」というレポートのひな形を設定しておくことで、階層的(例:資産>流動資産>現金預金)に数字を把握することも可能です。
決算書を作成するときや残高分析の出発点として使えそうですね。
- いわゆる「試算表」レベルで、各勘定科目ごとの残高を照会することが可能
- 「財務諸表バージョン」を設定することにより、階層的に(ツリー構造)数字を把握することも可能
残高照会(FAGLB03)
「残高照会」の機能では、個別の勘定科目について、月ごと、貸借ごとに残高の推移を見ることができます。情報量としてはあまり多くないですが、個別の勘定科目の大まかな推移を把握することが可能です。
勘定残高の異常値等を調べる際に利用できそうですね。
そうですね。また、ダブルクリックすることにより、明細照会機能に「ドリルダウン」することも可能です。
- 個別の勘定科目について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
- 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能
明細照会(FAGLL03H、FAGLL03)
「明細照会」の機能では、特定の勘定科目に対する明細を出力することが可能です。たとえば、給料勘定の明細を1か月分出力するといった具合です。
「明細」というのは、伝票の中の1行1行のことでしたね。
そうですね。以下の図で言うと、給料1,000、福利厚生費200、未払費用1,200のそれぞれが1明細です。
「会計伝票の中身」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
「FAGLL03H」など、「H」がつくようなT-codeは、SAP HANAという最新verのSAPでのみ利用することが可能です。従前の機能と趣旨は変わらないですが、ユーザー設定により、より細かい粒度で情報を見ることが可能となっています。
- 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
- 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(原価センタ、税コード単位で集計等も可能)
伝票照会(FB03)
1つ1つの取引内容を把握したい場合には、「伝票照会」の機能を利用します。
伝票ヘッダ情報、伝票の入力者等の詳細な情報を把握することができます。
取引の内容を把握するには、個別の伝票を見に行くのが一番ですね。
- 個別の取引内容を紹介することが可能
- 取引に関連する証票、伝票入力者等の情報を取得することが可能
財務諸表出力 > 残高照会 > 明細照会 > 伝票照会といった形で、荒い粒度から、徐々に細かい粒度で照会が可能です。
GLマスタ照会(FS03)
勘定コードのマスタ設定を見たい場合には「マスタ照会」を利用します。
自動仕訳のみ(マニュアル転記不可)、税コード入力必須等の各種マスタ設定を照会することが可能です。
やや高度な話に聞こえますが、「取引データ」ではなく、「システムの設定」情報を見に行くようなイメージですね。
- GLマスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(自動転記のみ等)
- システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない
AR(債権)系
おさらいですが、SAPでは得意先や仕入先ごとに「補助元帳」を持っています。
「統制勘定」を使って補助元帳の管理を行っているということでしたね。
そうですね。ここから紹介する機能は「補助元帳(AR、AP)」の残高や明細を照会する機能です。
「補助元帳」「統制勘定」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
得意先残高照会(FD10N)
得意先verの「残高照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 個別の得意先について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
- 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能
得意先明細照会(FBL5H、FBL5N)
得意先verの「明細照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
- 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(取引日、取引条件等)
得意先マスタ照会(FD03)
得意先verの「マスタ照会機能」です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 得意先マスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(入金条件等)
- システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない
AP(債務)系
仕入先残高照会(FK10N)
仕入先verの「残高照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 個別の仕入先について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
- 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能
仕入先明細照会(FBL1H、FBL1N)
仕入先verの「明細照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
- 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(取引日、取引条件等)
仕入先マスタ照会(FK03)
仕入先verの「マスタ照会機能」です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。
- 仕入先マスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(入金条件等)
- システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない
監査で「SAP」を利用することとなったのですが、どの機能を利用したら良いのかわかりません。。