(図解)経理/監査実務で使える「SAP-FIのT-code」 ~基礎となる標準機能~
【難易度★★★★☆】

相談者

監査で「SAP」を利用することとなったのですが、どの機能を利用したら良いのかわかりません。。

会計士

今回の記事では、SAP -FI(財務会計)の中でも利用頻度の高い標準機能をご紹介していきます。

どちらかというと、経理の責任者や監査人など、数字を「チェックする」観点で利用するようなT-codeを中心にご紹介します

相談者

伝票の「入力」系の機能については、今回は対象外ということですね。

会計士

そうですね。伝票の「入力」については、標準機能をそのまま使うケースもありますが、各社でカスタマイズしているケースが多いです。

一方、今回ご紹介する照会・レポート機能については、各社共通で標準機能を利用されることが多いのではと思います

GL(勘定科目)系

財務諸表出力(S_ALR_87012284)

会計士

「財務諸表出力」では、いわゆる「試算表」のレベルで、全ての勘定科目に対する残高を出力することが可能です。

また、「財務諸表バージョン」というレポートのひな形を設定しておくことで、階層的(例:資産>流動資産>現金預金)に数字を把握することも可能です。

相談者

決算書を作成するときや残高分析の出発点として使えそうですね。

  • いわゆる「試算表」レベルで、各勘定科目ごとの残高を照会することが可能
  • 「財務諸表バージョン」を設定することにより、階層的に(ツリー構造)数字を把握することも可能

残高照会(FAGLB03)

会計士

「残高照会」の機能では、個別の勘定科目について、月ごと、貸借ごとに残高の推移を見ることができます。情報量としてはあまり多くないですが、個別の勘定科目の大まかな推移を把握することが可能です。

相談者

勘定残高の異常値等を調べる際に利用できそうですね。

会計士

そうですね。また、ダブルクリックすることにより、明細照会機能に「ドリルダウン」することも可能です。

  • 個別の勘定科目について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
  • 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能

明細照会(FAGLL03H、FAGLL03)

会計士

「明細照会」の機能では、特定の勘定科目に対する明細を出力することが可能です。たとえば、給料勘定の明細を1か月分出力するといった具合です。

相談者

「明細」というのは、伝票の中の1行1行のことでしたね。

会計士

そうですね。以下の図で言うと、給料1,000、福利厚生費200、未払費用1,200のそれぞれが1明細です。

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「FAGLL03H」など、「H」がつくようなT-codeは、SAP HANAという最新verのSAPでのみ利用することが可能です。従前の機能と趣旨は変わらないですが、ユーザー設定により、より細かい粒度で情報を見ることが可能となっています。

  • 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
  • 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(原価センタ、税コード単位で集計等も可能)

伝票照会(FB03)

会計士

1つ1つの取引内容を把握したい場合には、「伝票照会」の機能を利用します

伝票ヘッダ情報、伝票の入力者等の詳細な情報を把握することができます。

相談者

取引の内容を把握するには、個別の伝票を見に行くのが一番ですね。

  • 個別の取引内容を紹介することが可能
  • 取引に関連する証票、伝票入力者等の情報を取得することが可能
会計士

財務諸表出力 > 残高照会 > 明細照会 > 伝票照会といった形で、荒い粒度から、徐々に細かい粒度で照会が可能です

GLマスタ照会(FS03)

会計士

勘定コードのマスタ設定を見たい場合には「マスタ照会」を利用します。

自動仕訳のみ(マニュアル転記不可)、税コード入力必須等の各種マスタ設定を照会することが可能です。

相談者

やや高度な話に聞こえますが、「取引データ」ではなく、「システムの設定」情報を見に行くようなイメージですね。

  • GLマスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(自動転記のみ等)
  • システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない

AR(債権)系

会計士

おさらいですが、SAPでは得意先や仕入先ごとに「補助元帳」を持っています。

相談者

「統制勘定」を使って補助元帳の管理を行っているということでしたね。

会計士

そうですね。ここから紹介する機能は「補助元帳(AR、AP)」の残高や明細を照会する機能です。

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「補助元帳」「統制勘定」については、以下の記事をあわせてご参照ください。

得意先残高照会(FD10N)

会計士

得意先verの「残高照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 個別の得意先について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
  • 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能

得意先明細照会(FBL5H、FBL5N)

会計士

得意先verの「明細照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
  • 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(取引日、取引条件等)

得意先マスタ照会(FD03)

会計士

得意先verの「マスタ照会機能」です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 得意先マスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(入金条件等)
  • システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない

AP(債務)系

仕入先残高照会(FK10N)

会計士

仕入先verの「残高照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 個別の仕入先について、月ごと、貸借ごとの残高の推移を把握することが可能
  • 異常値チェックや分析の入り口として利用することが可能

仕入先明細照会(FBL1H、FBL1N)

会計士

仕入先verの「明細照会」機能です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 伝票の明細単位で情報を照会することが可能
  • 残高単位よりも細かい粒度で分析をする際に利用(取引日、取引条件等)

仕入先マスタ照会(FK03)

会計士

仕入先verの「マスタ照会機能」です。要領としては、GL(勘定科目)と同様です。

  • 仕入先マスタ(勘定コード)ごとの設定内容を確認することが可能(入金条件等)
  • システムの根幹となる設定であるため、変更はあまり想定されない
本記事のまとめ
  • SAPを使って数字をチェックするために、「財務諸表出力」「残高照会」「明細照会」「伝票照会」「マスタ照会」といった標準機能を利用することが可能
  • 財務諸表出力 > 残高照会 > 明細照会 > 伝票照会といった形で徐々に細かい粒度で照会できる
  • 得意先、仕入先などの補助元帳についても同じような機能でデータの照会が可能