え、なんで親会社じゃないんですか。。
サントリーグループは、珍しい組織形態をとっていて、親会社である「サントリーホールディングス」は上場しておらず、子会社である「サントリー食品インターナショナル」だけが上場しています。
今回は、一般の投資家でも株の売買ができる「サントリー食品インターナショナル」を分析していこうと思っています。
そうなんですか。サントリーホールディングスの株は「非上場」なので、一般投資家には売買ができないのですね。
「上場」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
Contents
主要な経営指標の推移
まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。
全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです。
主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成して見ましたので、あわせて推移を見てみましょう(単位:百万円)。
売上・利益ともに比較的安定しているような印象ですね。
そうですね。コロナ禍による影響により2021年度はやや落ち込みがありますが、2022年では回復傾向にあるようです。
「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結決算書
次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。
以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。
連結BS
まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。
負債が多額にあるわけでもないですし、資本の割合も50%以上あるので、安全性の観点からは問題なさそうに見えますね。
連結PL
次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。
売上原価や販管費等の割合が大きいかどうかは、同業他社と比較して見たほうが良さそうですね。ざっと見たところだと純利益も黒字となっていて、大きな問題はなさそうです。
連結CF
最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています。
「為替による変動額」は除いているため、「期首+営業CF+投資CF+財務CF≠期末」となっています(為替影響は+3,971M)。
本業で儲かったお金をもとに将来投資や借金の返済に回しているんですね。
そうですね。以下の分類における「優良型」に該当しますので、キャッシュ・フローのパターン的には問題なさそうです。
「決算書」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
注記情報
もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。
セグメント情報
サントリー食品は「日本」「アジアパシフィック」「欧州」「米州」といった地域別にセグメントを分解して開示を行っています。
やはり売上や利益の大部分を日本やアジアが占めているんですね。
そうですね。フランスの「オランジーナ」の買収などもあり、欧州での売り上げも拡大しているようです。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益の分解
サントリー食品は、地域別のセグメント情報をさらに「製品別(飲料・健康食品)」に分解して収益を開示しています。
健康食品事業にも展開しているんですね。
そうですね。私もあまりなじみがなかったのですが、有報を読み進めていくと以下のような記載もありました。アジアにおけるBRANS’s Essence of Chickeという商品がメインとなっているようです。
「収益の分解」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
指標分析
ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。
安全性分析
流動比率
サントリー食品の「流動比率」は114.4%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- アサヒグループHD ⇒ 56.3%
- キリンHD ⇒ 138.0%
アサヒは合併の影響で一時的に流動比率が低くなっています。以下の記事もあわせてご参照ください。
自己資本比率
サントリー食品の「自己資本比率」は51.3%と目安の50%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- アサヒグループHD ⇒ 38.7%
- キリンHD ⇒ 36.2%
「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益性分析
次に「収益性」の指標を見ていきます。
利益率
- 売上総利益率 ⇒ 41.2%
- 営業利益率 ⇒ 9.3%
- 税引前利益率 ⇒ 9.2%
- 当期純利益率 ⇒ 5.4%
なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2021年12月期の有価証券報告書より計算しています)。
- 売上総利益率 ⇒ 38.1%
- 営業利益率 ⇒ 9.5%
- 税引前利益率 ⇒ 8.9%
- 当期純利益率 ⇒ 6.9%
- 売上総利益率 ⇒ 45.1%
- 営業利益率 ⇒ 3.7%
- 税引前利益率 ⇒ 5.5%
- 当期純利益率 ⇒ 3.3%
同業他社と比べても、そんなに悪い水準ではなさそうですね。
ROA
サントリー食品の「ROA」は4.2%と目安の5%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- アサヒグループHD ⇒ 3.4%
- キリンHD ⇒ 2.4%
同業他社と比べて高い水準にあるようですね。
ROE
サントリー食品の「ROE」は8.4%と目安の8%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- アサヒグループHD ⇒ 9.4%
- キリンHD ⇒ 6.9%
デュポンシステムによる分解
ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。
- 利益率 ⇒ 5.4%
- 総資産回転率 ⇒ 0.78
- 財務レバレッジ ⇒ 1.98
利益率が5.4%と比較的高いのに加えて、レバレッジ効果でさらにROEを引き上げていますね。
なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2021年12月期の有価証券報告書より計算しています)。
- 利益率 ⇒ 6.9%
- 総資産回転率 ⇒ 0.50
- 財務レバレッジ ⇒ 2.75
- 利益率 ⇒ 3.3%
- 総資産回転率 ⇒ 0.74
- 財務レバレッジ ⇒ 2.85
「収益性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
株価分析
PBR
直近(4/28時点)のyahooファイナンスにおけるPBRは「1.84」となっています。
「PBR」は、以下の式で計算することができます。
PBR(株価純資産倍率)= 株価÷1株あたりの株主資本
「PBR」は「Price Book-value Ratio」の略です。
「PBR」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
PER
直近(4/28時点)のyahooファイナンスにおけるPERは「21.57」となっています。
「PER」は、以下の式で計算することができます。
PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの利益
「PER」は「Price Earnings Ratio」の略です。
「PER」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
PBR、PERともに目安となる水準を上回っていますが、高すぎるという水準ではなさそうですね。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページから見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
今回は「BOSS」や「伊右衛門」などで有名な「サントリー食品インターナショナル」という、サントリーホールディングスの子会社の決算書を分析していきます。