「ホールディングス」とは?
「ホールディングス」化とは、グループ経営の手法の1つです。「ホールディングス(持株会社)」という親会社を作成して、各グループ子会社の株式を保有させる組織形態のことをいいます。
「ホールディングス会社」に対して、各子会社のことを「事業会社」ということもあります。また、「ホールディングス会社」は、各事業会社の決算書をとりまとめ、グループとしての決算書(連結決算書)を作成します。
「連結決算書」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
- キリンホールディングス
- アサヒグループホールディングス
- サントリーホールディングス
- ANAホールディングス
- ENEOSホールディングス
- 日清食品ホールディングス
- コスモエネルギーホールディングス
- 大塚ホールディングス
「ホールディングス」という名称でない場合であっても実態は持株会社であるというケースはあります(XXグループ等)。純粋持株会社ではないですが、2021年は春からSONYも「SONYグループ」、楽天も「楽天グループ」に社名を変更をしており、グループ経営の強化を進めています。
「持株会社」のうち、実際に事業は行わずに、経営管理等のホールディングス業務だけに専念する会社を「純粋持株会社」、事業も行っている持株会社を「事業持株会社」とよびます。
「ホールディングス」化のメリット
ホールディングス化することのメリットは大きく2点です。
- 「経営」と「事業運営」を分業することによる効率的なグループ経営
- スムーズなM&A(合併、買収)の実現、買収の防衛
「グループ経営」を効率的に進めるためには、「権限の委譲」がポイントになります。
すなわち、事業会社に「事業に関連する意思決定」の権限を委譲することで、親会社(ホールディングス)が「グループ経営戦略」に専念する一方、各事業会社はそれぞれの「事業に集中する」ことができるため、スピード感のある効率的なグループ経営を実現することができます。
ホールディングスの主な業務はグループ会社の株式の管理です(グループ会社の株式をコレクションとして保有しているイメージです)。この体制をとることで、スムーズなM&A、買収の防衛といったメリットを得ることができます。
すなわち、ホールディングス以外の形態でM&A(買収及び合併)を行う場合、買収元企業との文化の違いによる経営統合(PMI※)に時間がかかるのに対して、ホールディングスの形態をとっている場合は、新しいコレクションが増えるようなイメージであり、経営統合に時間を要さないといったメリットがあります。また、コレクション同士はそれぞれ独立しているため、買収企業の「自立性」を維持しながらグループ会社に加えることができます。
さらに、ホールディングスが事業会社の株式を保有していることから、他社が買収をするためには、ホールディングスの保有している株式を購入しないといけないため、買収が困難となります。
「PMI」は、Post Merger Integrationの略で、合併後の経営統合のことをいいます。ホールディングスの場合であってもPMIが不要というわけではなく、ホールディングスの形態をとらない場合に比べて時間を要さないという意味である点はご留意ください。
「ホールディングス」化のデメリット
ホールディングス化のデメリットとして、グループの統率をとることが難しいといったデメリットがあります。すなわち、ホールディングスが株を保有するという形態をとることから、「ホールディングス」と「事業会社」の間に「上下関係」ができてしまい、軋轢が生まれるといった可能性があります。
また、事業会社が「自立」しすぎることで、グループ間で協力して事業を行うという姿勢が失われる可能性があります(グループ間での事業の横連携がとれない)。
私も仕事柄、HD(※)の形態をとっているお客さんと仕事をすることが多いのですが、事業会社からすると「HDが勝手に言っている」、HDからすると「事業会社が言うことを聞かない」といった、特に「上下関係」による人間関係の軋轢が多い印象です。
「ホールディングス」のことを略して「HD」といいます。
なるほど。ホールディングス化することにもデメリットはあるんですね。ただ、ホールディングス化している事例が増えているということは、やはりメリットが大きいと判断する会社が多いのですかね。
そうですね。うまくグループとしての統制をとることができれば、大きなメリットを得ることができるので、経営者の腕の見せ所です。
HDがリーダーシップを発揮しながら、グループ会社の自立性を維持することで効率的なグループ経営が可能です。
最近「ホールディングス」という言葉をよく聞くのですが、これはなんでしょうか。