(図解)簡単に理解できる「住宅ローン控除」の仕組み~所得控除と税額控除の違い~
【難易度★★★☆☆】

相談者

先日マンションを購入しました!不動産の営業の方から「住宅ローン控除」を利用できると聞いたんですが、どのような制度なんでしょうか。

大きな節税効果

マンションのご購入おめでとうございます。「住宅ローン控除」ですが、住宅ローンの残高に応じて、所得税を減額できる制度です。詳細は後述しますが、かなりの節税効果がある制度ですので、しっかり申請しましょう。

会計士

「住宅ローン控除」を理解するために、まず知っておいてほしいのが、「所得控除」と「税額控除」の違いです。

相談者

いきなりややこしい言葉が出てきましたね。なんだか似たような言葉ですし。。

「所得控除」とは?

所得控除

まずは「所得控除」について、解説を進めていきます。ここでは、所得税の計算の流れを理解することがポイントです。以下、所得税の計算の流れを見ていきます。

まず、「年収」の金額から「給与所得控除」というものを差し引き、「給与所得」を計算します(ややこしいですが、「給与所得控除」と「所得控除」は別物です)。

その後、「所得控除」を差し引いて計算された「課税所得」に「所得税率」をかけて、支払うべき税額を計算します

社会保険料控除や医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税)といった項目が所得控除の代表例です。「所得控除」は、控除額から税率がかけられ、納付税額(支払う税金)から控除されます。たとえば、100万円の「所得控除」があり、税率が15%だった場合、15万円が納付税額から減額されます。

会計士

具体的な数値例を見ながら理解を深めましょう。

相談者

100万円の「所得控除」があった場合は、税率がかけられた金額(例えば15万円)が税金の減額となるんですね。

ここでは15%と仮置きしていますが、所得税率は「累進課税制度」というものが適用されており、年収に応じて所得税率が変わってきます(詳細は別途解説予定です)。

(国税庁HPより抜粋)
会計士

念のため用語を整理しておきますが、「年収」と「課税所得」は別物です。会社の決算でいうと、「年収」が売上、「課税所得」が利益のようなイメージです。

相談者

「給与所得控除」と「所得控除」もややこしいですよね。。

会計士

そうですね。こちらも別物なので、しっかりと区別しておさえておきましょう。

あわせて読みたい

「給与所得控除」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

「所得控除」の1つである「寄付金控除(ふるさと納税)」については、以下の記事で解説していますので、あわせてご参照ください。

「税額控除」とは?

税額控除

次に「税額控除」ですが、先ほどの税金の計算には続きがあります。

先ほど計算した「税額」からさらに「税額控除」というものを引くことができます。「税額控除」の代表例が「住宅ローン控除」です。「税額控除」は税率がかけられることなく、全額を納付税額から控除することができます代表例はこれから解説する「住宅ローン控除」です

相談者

こちらは、税率がかかることなく「全額」なんですね。だから、大きな節税効果があるということなんですね。

「税額控除」にはそのほかに「配当控除」「外国税額控除」等がありますが、圧倒的に節税効果が大きいのがこの「住宅ローン控除」です。

「住宅ローン控除」とは?

会計士

そのとおりです。それでは、本題の「住宅ローン控除」の解説に入っていきます。改めてですが、「住宅ローン控除」は、住宅ローンの残高に応じて、所得税の支払いを減額できる制度のことです。こちらは「税額控除」に該当する制度です。

税額控除額の計算

以下のいずれか小さい金額を「税額控除」することができます(※)。

  • 住宅ローン残高の1%
  • 40万円

(※)令和4年度の税制改正によって変更となることが予定されています。

住宅ローン控除

「住宅ローン控除」では、住宅ローンの残高×1%を税額から控除することができます。たとえば、2,000万円のローンが残っている方は、20万円(2,000万円×1%)が控除の対象です。ただし、限度額がある点は留意が必要です。4,000万円以上のローンがある場合は、40万円が限度額となります。また、控除できる期間は約10年(※)です。

現在(2021年3月時点)は、低金利時代ということもあり、金利の支払いよりも住宅ローン控除の金額が大きくなるケースも出てきています。たとえば、住宅ローンの金利が0.5%、ローン残高が2,000万円の場合、利息の支払いが年間10万円(2,000万円×0.5%)に対して、住宅ローン控除の金額が年間20万円(2,000万円×1%)となるので、毎年10万円得することになります。
また、所得税から控除しきれなかった金額は、住民税から控除されることになります

直近では控除期間が「13年」となる特例を期間限定で利用できますので、最新の条文改正を確認するようにしましょう

また、2022年の税制改正にて、控除率は「0.7%」となり、上限額についても省エネ物件でない場合は、3,000万円となることが予定されています。

国税庁HP マイホームの取得や増改築などしたときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto303.htm

あわせて読みたい

「令和4年度税制改正」については、以下の記事をあわせてご参照ください。

「住宅ローン控除」を適用する場合は、初年度に「確定申告」をする必要があります。以下の記事もあわせてご参照ください。

相談者

最高で40万円がまるまる税金から控除されるんですね。非常にお得なことがわかりました!さっそく、手続を進めようと思います。

会計士

そうですね。10年利用した場合には400万円もの節税効果が出てきます。具体的な「手続」や適用のための「要件」については、別途解説しようと思います。

税務観点からは圧倒的な節税効果がありますが、一方で、住宅ローンを組むということは「借金をする」ということでもあります。借金をする場合には、利息の支払いが生じますので、メリット、デメリットを整理のうえ、計画的にご利用ください。

本記事のまとめ
  • 「住宅ローン控除」は住宅ローンの残高に応じて、所得税を減額できる制度
  • 「住宅ローン控除」は、「所得控除」ではなく、「税額控除」のため、節税効果が大きい
  • 低金利時代においては、利息の支払いを節税効果が上回ることにより、得になることもある

「住宅ローン控除」は、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。
また、「住宅ローン控除」を適用するために、いくつか要件がありますのでご留意ください。