ROESGとは?

SDGsは、世の中的にも大きなトレンドになっていますよね。「ROESG」とは、どのようなもの指標なのでしょうか。
「ROESG」とは、「ROE」と「ESG」を組み合わせて造語のことをいいます。
一橋大学の伊藤教授が「伊藤レポート」のなかで謡っている指標のことで、財務指標である「ROE」と非財務指標である「ESG」の双方を追求することで持続的な企業価値の向上につながると言われています。
「伊藤レポート」とは、一橋大学の伊藤教授を座長とした経済産業省の報告書のことをいいます。企業価値の向上に向けた課題を提言しているレポートで、ESG経営の重要性も説明されています。
(参考)経済産業省HP:伊藤レポート3.0
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004.html

「ROE」「ESG」といった構成要素についてそれぞれ見ていきましょう。

ROEとは
「ROE(自己資本利益率)」は、以下の式によって計算することでがきます。
ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 ×100
「ROE」とは、株主が拠出した資本(自己資本)利用して、どの程度の利益を上げているかを表す指標のことをいいます。
「自己資本」をいかに効率的に運用できているかを分析することができ、一般的には、8%~10%以上であれば効率的に稼いでいるといわれています。

「ROE」については、以下の記事をあわせてご参照ください。

「いかに効率よく稼いでいるか」を見る指標でしたね。

そうですね。ROEは「デュポンシステム」という計算式で分解が可能で、投資家にとっても非常に重要な指標となっています。
「デュポンシステム」とは、「ROE」を以下の式に分解して分析を行う手法のことをいいます。
ROE= 売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
具体的な数値に分解すると、以下のようになります。
ROE=(当期純利益/売上高)×(売上高/総資産)×(総資産/自己資本)


「デュポンシステム」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
ESGとは
「ESG」とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の略で、企業活動を行うにあたり考慮すべき3つの観点を示す言葉のことをいいます。
気候変動や人権問題など数多くの課題がある社会の中で、企業は利益追求を求めるだけではなく、環境、社会、企業統治などの観点からも適切な取り組みを指摘べきという考え方が背景にあります。

要は、お金儲けだけではダメですよ、企業の社会的責任を意識して活動を行いましょうということですね。
これだけ聞くとお説教のように聞こえてしまいますが、投資家の間にもこのような意識は浸透してきていて、ESGの観点から正しい活動を行っている企業への投資をするべきだという風潮は年々広がっています。

なるほど。消費者の観点からもこのような意識は広がっていると感じますね。環境への配慮のない企業と、環境に配慮している企業の商品であれば、後者を優先して選ぶようにしています。

そうですね。企業の長期的な成長の観点からはESG活動も非常に重要だという認識が社会からの共通認識としてもあるということですね。
「サステナビリティ」という言葉も昨今では耳にしますが、SDGをかみ砕いた表現のことをいいます。SDGs(次章参照)が具体的な目標・ゴールを示しているのに対して、サステナビリティは、もう少し抽象的で一般的な表現となっています。
- 環境:温室効果ガスの削減、再生可能エネルギーの利用など
- 社会:人権の保護、男女平等、多様性(ダイバーシティ)、ワークライフバランスの実現など
- 企業統治:法令の遵守(コンプライアンス)、情報開示、内部監査など

SDGsとESGの違い
「SDGs」とは、Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標のことをいいます。要は、持続可能な世界を実現するために、世界レベルで取り組むべき目標といったイメージの指標です。
SDGsは、国連や政府が主体となり、すべての人々が取り組みべき活動であるのに対して、ESGは、企業価値向上のために企業が取り組むべき活動であるという点が違いになります。

ざっくり言うと同じようなものではあるのですが、世界レベルでの取り組みなのか、企業レベルでの取り組みなのかという点が違いとしては挙げられます。
企業がESGに配慮しながら活動を進めることで、結果的にSDGsで定められている目標を達成することができるため両者は同じようなものであるという見方もできます。

なるほど。結局、目指すところはお互いに同じということですね。

ROESGの事例

なるほど。「ROESG」というのは、財務指標と非財務指標をバランスよく見るための指標といったイメージになるのでしょうか。

まさにそのとおりですね。「ROESG」をKPI(Key Performance Indicator)として取り入れる企業も出てきています。
具体的な計算式のようなものはなく、取り入れ方や捉え方は企業によりますが、実際の事例を見るとよりイメージが湧くと思います。

「ROESG」という考え方自体は、あくまで概念ということですね。事例を見るとイメージが湧きそうです。
明治ホールディングス

まずは、明治ホールディングスの事例からご紹介します。明治ホールディングスでは、ROEの数字に「ESG目標達成」「明治らしさ目標達成」といった係数を調整することで「明治ROESG」という指標を設定しています。



財務指標だけでなく、非財務指標にも配慮しながら経営をしていることが投資家への情報開示を見るだけでも伝わってきますね。

各指標についてRatingしていたり、具体的な数字を出しているのでわかりやすいですね。
「明治ホールディングスの決算書分析」を実施していますので、以下の記事もご参照ください。
エーザイ

次にエーザイ社の事例をご紹介します。「価値創造レポート(旧統合報告書)」より以下の記載を抜粋しました。


内容は非常にややこしいですが、非財務資本(ESG)が企業価値の要素として重要であると考えていることはよくわかりますね。

そうですね。このようにESGに関する情報開示を行っている企業は増えてきていますし、今後は必須開示項目となるといった議論も行われています。
投資家としてもそうですし、経理担当者としても非常に重要なトピックになりますので、今後の動向をキャッチアップしていきましょう。
今回は、昨今注目されている「ROESG」という考え方について解説を進めていきます。SDGsがトレンドとなっている中、投資家から注目されている指標ですので、しっかりとおさえていきましょう。