(実践編)「日本マクドナルドHD」の決算書分析_2021.12 ~有価証券報告書を読んでみる②~
【難易度★★★☆☆】

会計士

今回は、みんな大好き「日本マクドナルド」の決算書を分析していきます。

相談者

私も大好きです。いつも並んでいるので、儲かっているイメージがありますね。

会計士

決算書を見ることで「会社の真の姿」を把握することができるので、早速分析を進めていきましょう。

なお、マクドナルドの本社はアメリカですが、日本法人も東証の「スタンダード市場」に上場しています

上場
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「上場」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

正式には「日本マクドナルドホールディングス」ですが、本記事では「日本マクドナルド」と省略して記載します。

主要な経営指標の推移

会計士

まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです

(2021年12月期 日本マクドナルド「有価証券報告書」より抜粋)
会計士

主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成してみましたので、あわせて見てみましょう(単位:百万円)。

相談者

売上、利益ともに安定しているようですね。直近(2021年)も業績が良さそうに見えます。ROE(自己資本利益率)は、やや下がってきているようですね。

会計士

そうですね。売上、経常利益、営業利益は過去最高だったようです。

また、「ROE(自己資本利益率)」ですが、「自己資本比率」が増加していることが低下の理由かと推測されます

「ROE(自己資本利益率)」には、「財務レバレッジ効果」が働くので、自己資本比率とは逆相関の関係にあります(詳細は後述する「デュポン分析」もご参照ください)。

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「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

連結決算書

会計士

次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。

以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。

連結BS

会計士

まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。

相談者

純資産の割合が大きいですね。

会計士

そうですね。過去の水準と比較して徐々に純資産の割合が増えていることから、内部留保(儲かったお金を社内に蓄積すること)が増えていると推測されます

相談者

配当してもさらにお金が余っている状況ということでしょうか。

会計士

傾向だけ見ると、そのとおりですね。実際に以下の決算数値を見てもここ数年で大きくお金を貯めこんでいることがわかります

お金を貯めこんでいる?
  • 【現金預金】2017年12月末残高が25,969百万円に対して、2021年12月末残高は、75,267百万円と大きく増加(3ヶ月超の定期預金25,000百万円含む)
  • 【利益剰余金】2017年12月末残高が66,369百万円に対して、2021年12月末残高は、132,179百万円と大きく増加
相談者

なるほど。将来的に増配(配当額を増やす)するようなこともあるかもしれないですね。

会計士

そうですね。直近の配当実績を見ても増配されているのですが、それでも内部留保が増えている傾向を見ると、さらなる増配の可能性もあります

あるいは、将来の業績低迷時のリスクヘッジのために手元にキャッシュを残しておく可能性もあります。また、将来的に大きな投資があるかもしれません。いずれにせよ今後のキャッシュの動向に注目ですね。

連結PL

会計士

次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。

相談者

最終的な利益率が「7.5%」となっていて、PLを見る限りで大きな問題はなさそうですね。

全店売上高(フランチャイズ分も手数料ではなく、売上としてカウントした数字)は、6,520億円と発表されています。

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連結CF

会計士

最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています

相談者

本業で儲かったお金をもとに将来投資や借金の返済に回しているんですね。期首から期末にかけてキャッシュが増えていることから、お金を貯めこんでいることもわかりますね。

会計士

そうですね。分類でいうと「優良型」に該当しますので、キャッシュ・フローのパターン的には問題なさそうです。

注記情報

会計士

もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。

セグメント情報

会計士

日本マクドナルドは「単一セグメント」のため、セグメント情報の開示を省略しています

相談者

詳細な分析ができないですね。。

会計士

そうですね。。幅広い事業を展開しているわけではないので、連結財務諸表における開示で十分というスタンスですね。

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「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

セグメント情報

収益の分解

会計士

日本マクドナルドは「日本基準」を採用しているため、収益の分解を開示していません

相談者

これもないんですか。。たしかに「収益の分解」は、IFRS基準や新収益基準における開示要求でしたね。

会計士

ただ、翌期から「新収益基準」が適用されるため、来年は開示される見込みです(関連する注記情報を抜粋しています)。

(2021年12月期 日本マクドナルド「有価証券報告書」より抜粋)
相談者

なるほど。どのような開示がされるのか楽しみですね。

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指標分析

会計士

ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。

安全性分析

流動比率

会計士

日本マクドナルドHDの「流動比率」は175.5%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • KFCホールディングス ⇒ 179.5%
  • モスフードサービス ⇒ 210.6%

自己資本比率

会計士

日本マクドナルドの「自己資本比率」は74.3%と目安の50%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • KFCホールディングス ⇒ 55.6%
  • モスフードサービス ⇒ 69.4%
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「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

相談者

「安全性」という観点だと特段問題はなさそうですね。

収益性分析

会計士

次に「収益性」の指標を見ていきます。

利益率

日本マクドナルド
  • 売上総利益率 ⇒ 20.0%
  • 営業利益率  ⇒ 10.9%
  • 税引前利益率 ⇒ 10.3%
  • 当期純利益率 ⇒ 7.5%
会計士

なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2022年3月期の決算短信より計算しています)。

KFCホールディングス
  • 売上総利益率 ⇒ 42.0%
  • 営業利益率  ⇒ 6.3%
  • 税引前利益率 ⇒ 6.7%
  • 当期純利益率 ⇒ 4.7%
モスフードサービス
  • 売上総利益率 ⇒ 48.0%
  • 営業利益率  ⇒ 4.4%
  • 税引前利益率 ⇒ 5.9%
  • 当期純利益率 ⇒ 4.4%
相談者

ケンタッキーと比べると「粗利率(売上総利益率)」の数字が低いように見えます。

会計士

直営店とフランチャイズの割合が影響しているかと推測されます(ケンタッキーはフランチャイズが多い)。「フランチャイズ収入」については、以下の記事もあわせて見てみましょう。

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「フランチャイズ収入」の分析については、ケンタッキーの事例もあわせてご参照ください。

ROA

会計士

日本マクドナルドの「ROA」は9.7%と目安の5%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • KFCホールディングス ⇒ 10.1%
  • モスフードサービス ⇒ 5.1%

ROE

会計士

日本マクドナルドの「ROE」は13.3%と目安の8%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • KFCホールディングス  18.2%
  • モスフードサービス  7.3%
相談者

ROA、ROEの水準はいずれも目安を上回っていますし、悪い水準ではなさそうですね。

デュポンシステムによる分解

会計士

ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。

日本マクドナルドHD
  • 利益率 ⇒ 7.5%
  • 総資産回転率 ⇒ 1.29
  • 財務レバレッジ ⇒ 1.37
相談者

目安を上回っていますし、悪い水準ではなさそうです。

会計士

そうですね。過去と比べてやや減少傾向にあるのは、総資産が膨らんだため、資産の回転率がやや低下している(キャッシュを貯めこみすぎ?)ことや、財務レバレッジが低くなっている(純資産が増加している)ことが要因ですね。

相談者

キャッシュリッチなのは良いことに見えますが、「収益性」の観点からはマイナスに作用するということですね。

会計士

なお、同業他社の数字は以下のとおりです。

KFCホールディングス
  • 利益率 ⇒ 4.7%
  • 総資産回転率 ⇒ 2.16
  • 財務レバレッジ ⇒ 1.81
モスフードサービス
  • 利益率 ⇒ 4.4%
  • 総資産回転率 ⇒ 1.17
  • 財務レバレッジ ⇒ 1.44

株価分析

PBR

会計士

最後に直近の「株価指標」を確認していきましょう。

直近(6/24時点)のyahooファイナンスにおけるPBRは「3.50」となっています。

PER

会計士

直近(6/24時点)のyahooファイナンスにおけるPERは「31.35」となっています。

相談者

PBR、PERともに目安となる水準を上回っていますね。ただ、業績や将来的な増配の可能性なども考えると高すぎるわけではない気もしますね。

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本記事のまとめ
  • 「主要な経営指標の推移」⇒「BS」「PL」「CF」⇒「注記情報」⇒「指標分析」といったように、まずはハイレベルな情報から読み始め、徐々に細かい注記情報等を見ていくのがおすすめ
  • 業績は安定しており、かつ、安定性や収益性の指標について競合他社と比較しても問題がない水準であると考えられる
  • 内部留保が増えている(キャッシュを貯めこんでいる)ことから「収益性」はやや下がっている。余剰資金をもとに将来的に投資を進めていくことや、さらなる増配をする可能性も想定される。

「決算書」ってどこで見れるの?

上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。

  1. 会社のHP
  2. EDINET

①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。

(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。