八重洲ミッドタウン等、様々な開発を手掛けていますよね。楽しみです。
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主要な経営指標の推移
まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです。
主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成してみましたので、あわせて見てみましょう(単位:百万円)。
売り上げは右肩上がりで好調に見えますね。利益はやや増減がありますが、比較的安定していますね。
そうですね。2021年3月度はコロナ禍による影響(東京ドームが稼働できない、各種イベント開催不可)もあり業績が良くなかったようです(一方、分譲の好調により売上は大きくなっています)。
東京ドームも三井不動産が所有しているのですね。
そうですね。2021年にTOB(株式公開買い付け)を行い、東京ドームは三井不動産の傘下となりました。将来的な再開発を見込んでいるとのことで楽しみですね。
「TOB」とは、Takeover Bidの略で、株式公開買い付けのことをいいます。
TOBは、特定の買い付け期間、取得価格、取得株式数などの条件を公開して、不特定多数の投資家から株式を買い集めることで企業買収する手法です。
「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結決算書
次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。
以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。
連結BS
まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。
比較的、負債が大きいようですね。
そうですね。他社比較を見てもわかるのですが、デベロッパー業界では財務レバレッジを積極的に利用している印象です。優良物件への投資に向けて資金を投入するための借り入れとなっているようです。
なるほど。大型案件が多いため、開発のための資金が必要なんですね。
連結PL
次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。
最終的な利益率は「8.7%」となっており、収益性に大きな問題はなさそうですね。
そうですね。他社比較をするとやや利益率が低いようですが、十分利益が出ている水準かと思います。
連結CF
最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CF、財務CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています。
「為替による変動額」は除いているため、「期首+営業CF+投資CF+財務CF≠期末」となっています(為替影響は+4,997M)。その他、連結除外による影響もあり(2,491M)。
下図でいうと「積極投資型」に該当しますね。
そうですね。手元に大きなキャッシュを残すのではなく、積極的に投資に回しているようです。任天堂のようなキャッシュリッチ企業とは戦略が異なるようですね。
「決算書」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「キャッシュリッチ」な任天堂の決算書分析については、以下の記事もあわせてご参照ください。
注記情報
もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。
セグメント情報
三井不動産は「賃貸」「分譲」「マネジメント」「その他」といった事業別にセグメントを分解して開示を行っています。
「その他」以外のセグメントは好調ですね。
そうですね。「その他」には東京ドーム事業なども含まれているようですが、再開発やコロナからの回復によって業績が上向いてくるかもしれません。今後の動向に注目です。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益の分解
三井不動産では「セグメント情報=収益の分解」と整理をしているようです。
なるほど。セグメント情報で十分に収益を分解しているということですね。
「収益の分解」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
指標分析
ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。
安全性分析
流動比率
三井不動産の「流動比率」は182.9%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 三菱地所 ⇒ 189.0%
- 野村不動産HD ⇒ 360.7%
自己資本比率
三井不動産の「自己資本比率」は32.8%と目安の50%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 三菱地所 ⇒ 31.4%
- 野村不動産HD ⇒ 31.0%
「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益性分析
次に「収益性」の指標を見ていきます。
利益率
- 売上総利益率 ⇒ 23.2%
- 営業利益率 ⇒ 13.5%
- 税引前利益率 ⇒ 13.0%
- 当期純利益率 ⇒ 8.7%
なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2023年3月期の有価証券報告書より計算しています)。
- 売上総利益率 ⇒ 28.8%
- 営業利益率 ⇒ 21.5%
- 税引前利益 ⇒ 18.4%
- 当期純利益率 ⇒ 12.0%
- 売上総利益率 ⇒ 34.0%
- 営業利益率 ⇒ 15.2%
- 税引前利益 ⇒ 13.5%
- 当期純利益率 ⇒ 9.9%
他社の水準よりは低いですが、「8.7%」と比較的高い水準にあるようですね。
ROA
三井不動産の「ROA」は2.3%と目安の5%を下回る水準となっています。
なお、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 三菱地所 ⇒ 2.5%
- 野村不動産HD ⇒ 3.1%
ROE
三井不動産の「ROE」は6.9%と目安の8%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 三菱地所 ⇒ 8.0
- 野村不動産HD ⇒ 10.1%
ROAがかなり低いのですね。
そうですね。総資産が大きくなっていることが1つの要因となっているようです。資産効率(総資産回転率)が悪い可能性があります。
なるほど。キャッシュはあまり持っていないということでしたが、不動産を多く保有している影響ですね。
デュポンシステムによる分解
ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。
- 利益率 ⇒ 8.7%
- 総資産回転率 ⇒ 0.27
- 財務レバレッジ ⇒ 2.99
やはり総資産の回転率が低いことが引き下げの要因になっているようですね。
そうですね。同業他社も比較的同じ傾向にあるようです。
なお、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 利益率 ⇒ 12.0%
- 総資産回転率 ⇒ 0.21
- 財務レバレッジ ⇒ 3.20
- 利益率 ⇒ 9.9%
- 総資産回転率 ⇒ 0.32
- 財務レバレッジ ⇒ 3.26
「収益性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
株価分析
株価分解
まずは、2023年3月時点における株価の構成要素分解をしていきます。
「株価」は、以下の式で計算することができます。
株価 = PER × EPS(一株あたり純利益)
PBR
直近(9/10時点)の楽天証券におけるPBRは「1.06」となっています。
「PBR」は、以下の式で計算することができます。
PBR(株価純資産倍率)= 株価÷1株あたりの株主資本
PER
直近(9/10時点)の楽天証券におけるPERは「11.97」となっています。
「PER」は、以下の式で計算することができます。
PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの利益
PBRに関しては「1倍」に近い数字ですし、PERは目安となる水準を下回っているので比較的「割安」の水準といえそうですね。
「PBR」「PER」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
今回は日本を代表するデベロッパーである「三井不動産」の決算書を分析していこうと思います。