連結決算とは?
まずは、連結決算について簡単におさらいをしておきましょう(本題から読みたい方は読み飛ばしていただいてOKです)。
「連結決算」というのは、企業グループとしての決算書を作成することをいいます。
たとえば、日本を代表する企業の「SONYグループ」では、プレステや音楽等のエンタメ系の会社、SONY銀行といった金融系の会社、そしてテレビやオーディオといったエレクトロニクス系の会社等のグループ会社があり、これらの事業が相乗効果を生みながらグループとしてビジネスを行っています。
また、国内企業のみにとどまらず、海外にもグループ会社がたくさんあります。SONYグループであれば1,000社以上の子会社(グループ会社)があり、これらの会社を「企業グループ」として「財政状態」や「経営成績」をあらわすために「連結決算書(連結財務諸表)」を作成し、公表します。
確かに最近は「グループ経営」といった言葉も良く聞きますね。
そうですね。昨今の経済環境を踏まえ、「連結決算」の重要性が非常に高まっています。
昨今では、単体の決算書(1つの会社としての決算書)よりも連結決算書(連結財務諸表)を重視する傾向があります。ビジネスが多角化していること(様々な事業に展開している)やグローバル化が進んでいることが理由です。
また、「損失飛ばし」と呼ばれたりすることがありますが、グループ内の会社で取引を操作することによって、会社の業績を良く見せることができてしまうので、単体の決算書よりも連結決算書が重視されるという理由もあります。
グループとしてビジネスを行っていることが多いので、「連結決算書」のほうがより経営の実態を見ることができるということですね。
連結決算書の作成方法
「連結決算書」の作成方法ですが、基本的には各社の決算書を合わせればOKです。
ただし、「内部取引」を消去する必要がある点は気を付ける必要があります。
「内部取引」とはなんですか。。
「内部取引」というのは、企業グループ間の取引のことです。たとえば、グループ会社のA社から同じグループ会社のB社へ商品を販売するような取引(B社側はA社からの仕入れ)をいいます。
グループ間で生じた売上も含めて合算してしまうと、二重で売上が計上されてしまう可能性があります(以下の図を見てみましょう)。あくまで「グループとしての成績」を表現したいので、グループ内の取引は消去して、グループ外部との取引のみが「連結決算書(連結財務諸表)」に反映されるようにします。
「内部取引」をカウントしてしまうと、グループ間取引を利用して「連結決算」の数字を操作することができてしまいます。
そのため、連結決算上、「内部取引」を調整する必要があります。
たしかに、グループ間の売上まで集計してしまうと、売上がどんどん膨らんでしまいそうですね。あくまで外部との取引のみを「決算書」に反映させるということですね。よくわかりました!
投資と資本の相殺消去とは?
いよいよ本記事の本題に入りますが、「投資と資本の相殺消去」というのは、内部取引の消去の一環のことをいいます。
「投資と資本の相殺消去」とは、親会社の投資と子会社の資本を相殺消去することをいいます。イメージとしては内部取引の1つとして捉えていただければ良いかと思います。
なんのことだかよくわからないですね。。
ですよね。取引の流れを見ながら解説を進めていきます。
まず、親会社から子会社への出資を行った取引から始まりますが、親会社では「子会社株式(=投資)」、子会社では「資本金(=資本)が計上されます。
このような出資によって「親子関係」ができるんですね。
「親会社」「子会社」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
そうですね。親会社から子会社にお金が流れただけという意味で、連結上は「内部取引」の一環として捉えられます。
各社のBSを見ると、以下ような状況になっています。
親会社では「子会社株式(=投資)」、子会社では「資本金」が計上されていますね。
これを「単純合算」すると、以下のような状況になります。
連結グループ内で現金が動いた「内部取引」のはずなのに、単純合算するとBSが大きくなってしまうんですね。
そうですね。そのため、この内部取引を消去するために「投資と資本の相殺消去」を行います。
なるほど。これらを消去することによって連結内部の取引を除いた連結決算書ができあがるということですね。
そのとおりです。「投資と資本の消去」はあくまで内部取引の一部だけで、連結決算書を作成するためには、他にも様々な連結修正が必要となります。
連結決算プロセスの全体像
他の連結修正の概要については、「連結決算プロセス」の記事で解説をしていますので、あわせてご参照ください。
「連結決算プロセス」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
PKGの収集から連結精算表の作成まで様々なプロセスがありますね。あわせて読んでみます。
今回は連結決算における「投資と資本の相殺消去」という論点について解説を進めていきます。