(実践編)「FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)」の決算書分析_2022.9 ~有価証券報告書を読んでみる~
【難易度★★★☆☆】

会計士

今回は、回転寿司大手の「FOOD&LIFE COMPAIES(スシロー)」の決算書を分析していきます。

相談者

回転寿司は最近競争が激しいイメージがありますね。安くて美味しいのでよく利用させていただいております。

会計士

そうですね。やや価格競争に陥っている感じもありますが、ちゃんと利益が出ているのか、決算書を見ながら分析を進めていきましょう。

主要な経営指標の推移

会計士

まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです

(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「有価証券報告書」より抜粋)
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「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

会計士

主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成してみましたので、あわせて見てみましょう(単位:百万円)。

相談者

売上は順調に右肩上がりに見えますが、利益の水準はブレがあるようですね。

会計士

そうですね。コロナの「助成金収入」があったことから、前期は利益が大きくなっているようですが、今期は助成金の金額が減少したことにより利益が小さくなっています。また、今期は減損損失の計上も増加していることが利益に悪影響を与えています(PL分析にて詳細を見ていきます)。

連結決算書

会計士

次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。

以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。

連結BS

会計士

まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。

相談者

負債の割合が大きいように見えますね。

会計士

そうですね。海外への進出など、投資フェーズということもあるかもしれないですが、安全性の観点からはやや懸念がありそうです。

連結PL

会計士

次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。

相談者

利益率は「1.3%」とあまり高くなさそうですね。

会計士

そうですね。持分法による損失などの影響もありますが、原価や販促費に大きなお金をかけているため、営業利益率が高くないようです。

また、減損損失の計上が大きくなっている(23億⇒68億)ことや、昨年に比べて助成金収入が小さくなっている(107億⇒39億)ことも影響しています

(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「有価証券報告書」より抜粋)
相談者

たしかに去年よりも約45億円も多くの減損損失が計上されていますね。

会計士

採算の取れない店舗を減損しているようですね。また、助成金収入も去年の比べて約60億減少しているため、今期の利益が小さくなる要因となっています。

(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「有価証券報告書」より抜粋)
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連結CF

会計士

最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CF、財務CFがプラスとなっており、投資CFがマイナスとなっています

相談者

財務CFがプラスになっていますね。借金を増やしているのでしょうか。

会計士

そうですね。長期借入金の増加により財務CFがプラスとなっています。海外への進出など、投資フェーズということもあるかもしれないですが、借金の割合が多く、安全性の観点からはやや懸念がありそうです

注記情報

会計士

もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。

セグメント情報

会計士

Food&Life Companiesは「国内スシロー事業」「海外スシロー事業」「今日ダル事業」「その他事業」といった事業別に開示を行っています

矢印
(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「有価証券報告書」より抜粋)
相談者

昨年は「海外事業」が赤字であったのに対して、今期は黒字となっていますね。

会計士

そうですね。コロナからの回復もあり、海外事業が成長していると推測されます。一方、京樽事業は改革の途上であり、赤字となっているようです

決算説明会資料をあわせて見ると理解がより深まりますのであわせて読んでみましょう(以下抜粋)。

(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「決算説明会資料」より抜粋)
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「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

セグメント情報

収益の分解

会計士

FOOD&LIFE COMPAIESは、店舗売上、その他といった「販売形態別」に収益を分解して開示を行っています

(2022年9月期 FOOD&LIFE COMPANIES「有価証券報告書」より抜粋)
相談者

その他には、宅配などが含まれているのですかね。

会計士

開示資料からだとそこまで読み取れないのですが、おそらくそうではないかと思います(もう少し割合が多いような気もしていたのですが)。

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指標分析

会計士

ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。

安全性分析

流動比率

会計士

FOOD&LIFE COMPAIESの「流動比率」は125.8%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • くら寿司 ⇒ 102.5%
  • かっぱ・クリエイト ⇒ 154.7%

自己資本比率

会計士

FOOD&LIFE COMPAIESの「自己資本比率」は19.6%と目安の50%を大きく下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • くら寿司 ⇒ 45.9%
  • かっぱ・クリエイト ⇒ 36.8%
相談者

同業他社も自己資本比率が低い傾向にあるようですが、それと比べても低いですね。安全性という意味だとやや懸念がありそうですね。

会計士

そうですね。積極的な投資に伴って借金が増えてくると、安全性に問題が出てくる可能性もありますので、今後の展開には留意が必要です

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「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

収益性分析

会計士

次に「収益性」の指標を見ていきます。

利益率

FOOD&LIFE COMPAIES
  • 売上総利益率 ⇒ 53.7%
  • 営業利益率  ⇒ 3.6%
  • 税引前利益率 ⇒ 2.7%
  • 当期純利益率 ⇒ 1.3%
会計士

なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(くら寿司は、2022年10月期、かっぱ・クリエイトは、2022年3月期の有価証券報告書より計算しています)。

くら寿司
  • 売上総利益率 ⇒ 54.9%
  • 営業利益率  ⇒ -0.6%
  • 税引前利益率 ⇒ 1.0%
  • 当期純利益率 ⇒ 0.4%
かっぱ・クリエイト
  • 売上総利益率 ⇒ 49.9%
  • 営業利益率  ⇒ -3.1%
  • 税引前利益率 ⇒ 1.2%
  • 当期純利益率 ⇒ 1.1%
相談者

業界的に利益水準はあまり高くないようですね。

会計士

そうですね。コロナ禍ということもあり、助成金収入に依存している部分もあるので、今後の展開に留意が必要です。

ROA

会計士

FOOD&LIFE COMPAIESの「ROA」は1.2%と目安の5%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • くら寿司 ⇒ 0.7%
  • かっぱ・クリエイト ⇒ 2.3%

ROE

会計士

FOOD&LIFE COMPAIESの「ROE」は5.6%と目安の8%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。

同業他社
  • くら寿司  1.5%
  • かっぱ・クリエイト  6.5%
相談者

目安となる水準を下回っていますし、業界的にもあまり高い水準ではなさそうですね。

会計士

そうですね。具体的な要因をデュポンシステムによる分解分析で見ていきましょう。

デュポンシステムによる分解

会計士

ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。

FOOD&LIFE COMPAIES
  • 利益率 ⇒ 1.3%
  • 総資産回転率 ⇒ 0.90
  • 財務レバレッジ ⇒ 4.88
相談者

利益率が低い一方で、財務レバレッジが高くなっていますね。

会計士

そうですね。今後は利益率を改善していくことが必要と考えられます。また、財務レバレッジもあまり高い場合には、安全性の観点から懸念がありますね。なお、同業他社の数字は以下のとおりです。

くら寿司
  • 利益率 ⇒ 0.4%
  • 総資産回転率 ⇒ 1.75
  • 財務レバレッジ ⇒ 2.12
かっぱ・クリエイト
  • 利益率 ⇒ 1.1%
  • 総資産回転率 ⇒ 2.11
  • 財務レバレッジ ⇒ 2.82

株価分析

株価分解

会計士

まずは、2022年9月時点における株価の構成要素分解をしていきます。

計算式

「株価」は、以下の式で計算することができます。
株価 = PER × EPS(一株あたり純利益)

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PBR

会計士

直近(1/13時点)の楽天証券におけるPBRは「5.50」となっています。

PER

会計士

直近(1/13時点)の楽天証券におけるPERは「50.41」となっています。

相談者

株価は、かなり割高水準にあるようですね。

会計士

そうですね。これからの業績に期待されているということの表れのようです。

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本記事のまとめ
  • 「主要な経営指標の推移」⇒「BS」「PL」「CF」⇒「注記情報」⇒「指標分析」といったように、まずはハイレベルな情報から読み始め、徐々に細かい注記情報等を見ていくのがおすすめ
  • 売上は順調に推移しているものの、「減損損失の計上」「助成金収入の減少」に伴い、今期の利益は小さくなっている。借金の割合が高くなっていることから、安全性の観点からは懸念がある
  • 海外事業は、コロナ規制の解除に伴い、成長が進んでいる。一方京樽事業については、改革を進めている段階であり、今期は赤字となっている

「決算書」ってどこで見れるの?

上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。

  1. 会社のHP
  2. EDINET

①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。

(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。