(図解)少し深掘り「ROE分析」~デュポンシステムとは?~
【難易度★★★☆☆】

デュポンシステム

「ROE」とは?

相談者

前回の記事で「ROE」はさらに分解して分析することができるという話がありました。どのような分析ができるのか教えてください!

あわせて読みたい

「ROE」の基礎については、以下の記事をあわせてご参照ください。

ROE(おさらい)

今回は「ROE」をさらに分解したより深い分析である「デュポンシステム」について解説をしようと思います。まずは「ROE」について復習ですが、「ROE(自己資本利益率)」は、以下の式によって計算することでがきます。

ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 ×100

「ROE」は株主が拠出した資本(自己資本)利用して、どの程度の利益を上げているかを表す指標です。

「自己資本」をいかに効率的に運用できているかを分析することができ一般的には、8%~10%以上であれば効率的に稼いでいるといわれています

ROE
相談者

「ROE」は、「自己資本」をいかに効率的に運用できているかを分析することができる指標でしたね。これを分解するというのはどういうことでしょうか。

「ROE」の分解(デュポンシステム)とは?

ROEの分解

「ROE」をさらに分解すると、以下のとおり3つの要素に分解することができます。

ROE= 売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

具体的な数式に分解すると、以下のようになります。

ROE=(当期純利益/売上高)×(売上高/総資産)×(総資産/自己資本

デュポンシステム
相談者

いろんな要素が式に含まれていてまだピンとこないですね。

相談者

式を見ると、わかりづらいのですが、「売上高」と「総資産」という要素を間に入れることで、3つの視点から「ROE」を分解して見れるようになっているんですね。「売上高」と「総資産」を相殺すると、「ROE」の式である「純利益÷自己資本」に戻ります。

デュポンシステム
相談者

なるほど。「売上高利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」とはそれぞれどんな意味をもつのでしょうか。特に「財務レバレッジ」というのがよくわからないですね。。

売上高利益率

まず「売上高利益率」ですが、「当期純利益率÷売上高」で計算され、売上に対してどの程度利益をあげているかをあらわせす指標です。

いかに効率的な経営を行っているかを分析することができます高ければ高いほど収益性が高いことを意味し、「ROE」を引き上げる要因になります(以下の記事でも解説していますので、あわせて読んでみてください)。

総資産回転率

次に「総資産回転率」ですが、「売上高÷総資産」で計算され、いかに効率よく資産を利用して売り上げを上げているかをあらわす指標です。

高ければ高いほど資産を効率よく使用していることを意味し、「ROE」を引き上げる要因になります

財務レバレッジ

最後に「財務レバレッジ」ですが、「総資産÷自己資本」で計算され、資金調達のうち他人資本(借金)が占める比率をあらわす指標です。

高ければ高いほど借金をしている割合が多いことを意味し、「ROE」を引き上げる要因になります

デュポンシステム
相談者

借金の割合が大きいほど、「ROE」が高くなるんですか??

会計士

そうですね。ここがデュポンシステムによって「ROE」を分解する肝になるんですが、「ROE」が高かったとしても「財務レバレッジ」が高いことが理由で「ROE」が高い場合には、少し注意が必要なんです。

財務レバレッジ(補足)

「財務レバレッジ」が高いこと自体は問題がなく、「良い借金」を積極的にしているのであれば、利益率を向上させる要因となります。そのため、投資対象としては1つの評価のポイントになります。
ただ、一方で「財務レバレッジ」が高すぎる場合には、企業の「安全性」が損なわれていることを意味するので、注意が必要です。

相談者

借金はできればしないほうが良いと思うんですが、「良い借金」というのがあるんですか?

会計士

支払利息を上回るようなリターンが得られるような借金であれば、積極的に借金をすることによって、企業の成長を加速させる可能性があります

あわせて読みたい

「良い借金」「財務レバレッジ効果」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

財務レバレッジ

「財務レバレッジ」は、安全性を示す「自己資本比率」の逆数となっています。

「自己資本比率」(%)=自己資本 ÷ 総資産(自己資本+他人資本)

そのため、「財務レバレッジ」が高くなること=「自己資本比率」が低くなること
という関係にあるため、高すぎる「財務レバレッジ」は企業の安全性を損なう可能性があります

積極的に「良い借金」を行うことは企業の成長を加速させる一方、安全性を損なうリスクがある(トレードオフの関係といいます)ため、バランスが重要になってきます。

あわせて読みたい

「自己資本比率」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

事例による分析

相談者

実際の数値例も見てみたいです。

会計士

以下の記事で5社分のROE分析の事例を紹介していますので、こちらもあわせて読んでいただけますと幸いです。

あわせて読みたい

「三菱商事」や「ソフトバンク」といった企業のROE分析を行っていますので、あわせてご参照ください。

本記事のまとめ
  • 「ROE」は3つの要素「売上高利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」に分解することができる
  • 「ROE」が高い場合であっても「財務レバレッジ」が高いことが理由である場合には、少し注意が必要
  • 「財務レバレッジ」は「良い借金」をうまく利用することで利益率を向上させる要因になるが、「安全性」とはトレードオフの関係にあるのでバランスが重要

「決算書」ってどこで見れるの?

上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。

  1. 会社のHP
  2. EDINET

①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。

(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。