(図解)簡単に理解できる「新株予約権」の概要 ~ストック・オプションとは~
【難易度★★★☆☆】

相談者

「ストック・オプション」というものが非常に「夢のある権利」と聞いたのですが、どのようなものなのでしょうか。

会計士

「ストックオプション」は、従業員や役員に対する報酬として新株予約権を付与することをいいます。まずは「新株予約権」について理解を進めていきましょう。

「新株予約権」とは

新株予約権

「新株予約権」とは、株式を一定の価格で購入することのできる権利のことをいいます。

例えば「ある会社の株式を1,000円で購入する権利」を100円で購入したとします。業績好調により会社の株価株価が1,500円となった場合、本来1.500円の価値があるものを1,000円で買える権利なので、500円得することになります。ただし、100円は「権利代」として払っているので、500円-100円(予約権の購入額)=400円が儲けとなります

一方、会社の株価が800円であった場合、本来800円で買えるものを1,000円で買うと損をしてしまうので、新株予約権は行使されずに、権利代の100円が損となります

会計士

株価の変動と損益の関係をグラフで示すと以下のとおりになります。

相談者

なるほど。なんとなく理解できましたが、少し頭が混乱しています。。

株価と損益の関係 1/2

もう少し解説を進めていきます。「新株予約権」を理解するためには、「権利行使価格」「購入額」と「株価」の関係を整理することがポイントです。 

  • 「権利行使価格」は、新株予約権を行使するときに払い込む金額のことで、さきほどの例でいうと「1,000円」です。
  • 「購入額」は、新株予約権を取得する際に払い込む金額のことで、さきほどの例でいうと「100円」です。 

新株予約権は「株価」が上昇すればするほど、権利所有者の利益は増加していきます。仮に株価が10倍の10,000円になれば1,000円との差額分9,000円が丸々利益になります。 

株価と損益の関係 2/2

一方、「株価」が「権利行使価格」よりも下落した場合には「購入額」を限度として損失を被ります。株価が下落している場合には、権利行使をしないため、「購入額」以上の損失となることはありません

相談者

損失が限定的なのに対して、利益は青天井ということですね。夢がありますね。

「新株予約権」の会計処理

会計処理

実際に権利を行使するまでは「株主」ではないのですが、「株主予備軍」として、新株予約権者(新株予約権を買った人)からの払い込み額(上記で言うと100円)を純資産に計上します

また、権利行使がされたタイミングで「株主資本」として、出資額の合計を「資本金(資本剰余金)」に計上します。 

あわせて読みたい

「純資産」は少しとっつきづらい内容ですが、以下の記事もあわせてご参照ください。

「ストック・オプション」とは

ストック・オプション

「ストックオプション」とは、従業員や役員に対して報酬として新株予約権を付与することをいいます。 ストックオプションとして付与された場合には「購入額」はありません。そこで、「労働力」=「購入の対価」として人件費相当分が新株予約権として計上されます。

相談者

ストック・オプションを利用するメリットはどのようなどのような点なのでしょうか。

ストック・オプションのメリット
  • 業績拡大のためのインセンティブとなる(従業員、役員が会社の成長のために頑張る)
  • 現金で報酬をもらうよりも利益が増大する可能性がある
  • 現物株式でもらうよりも損失リスクが限定的である

⇒ 会社が成長すればするほど、報酬の額が大きくなるため、会社側、従業員(役員)側のそれぞれにWin-Winの関係を作ることができる

会計士

現時点ではあまり儲かっていないが、将来的に大きく成長が見込まれるようなベンチャー企業では特に効果を発揮しやすいです。

同じような目的を達成するため、「従業員持株会」「ESOP信託」「BIP信託」のような現物株式を付与する制度もありますが、ストックオプションの場合には株価の下落リスクを限定できる点が異なります。

「新株予約権」の種類

会計士

最後に「新株予約権」と「ストック・オプション」の関係を整理しますが、「新株予約権」の方が「ストック・オプション」よりも広い概念になっており、「ストック・オプション」は「新株予約権」の一種という関係です。

相談者

では、「ストック・オプション」以外に「新株予約権」が使われるのはどのような場合でしょうか。

その他の新株予約権

「新株予約権」の代表的な用途は「ストックオプション」ですが、それ以外にも資金調達手段として新株予約権を付与することや、「ポイズンピル(毒薬条項)」として付与されることがあります。

「ポイズンピル」とは、敵対買収を防衛するために、友好関係のある第三者に新株予約権を付与することをいいます。敵対的な買収を仕掛けられた際に、友好関係のある第三者が「ポイズンピル」を発動させることによって、敵対的な買収を仕掛けてきた相手の持株比率を減少させることができます。

「ポイズンピル」を発動させると既存株主の権利が希薄化されてしまうため、導入には慎重な検討が必要です。実際に発動することは稀であり、最終兵器として導入しているケースがほとんどです。

欧米に比べ、日本は友好的買収が多いため、ポイズンピルを活用する事例は少ないです。

本記事のまとめ
  • 「新株予約権」とは、株式を一定の価格で購入することのできる権利のこと
  • 「ストックオプション」とは、従業員や役員に報酬として新株予約権を付与すること
  • 会社が成長すればするほど、報酬の額が大きくなるため、会社側、従業員(役員)側のそれぞれにWin-Winの関係を作ることができる