【難易度★★★★☆】以上は「実務家向け」の内容が含まれますので、ご留意ください。
いきなりですが「BPR」とはなんでしょうか。。
「BPR」とは、「Business Process Re-enginieering」の略で、業務プロセスを改善するために既存の業務プロセスを見直し、再構築する活動のことをいいます。
たとえば、今回解説する「BPO化」もその1つですし、グループ企業のシステムを統一する、帳票の電子化を進める等の業務プロセス改善のための様々な活動が該当します。
BPO化ってなに?
「BPO」とは、Business Process Outsourcingの略で、自社で行っていた経理業務等を外部の業者に業務委託(アウトソース)することをいいます。
業務委託先(BPO)に業務を委託することで人件費の削減、働き方改革の推進等を行うことができます。
あくまでイメージですが、コールセンターのように経理業務を集中的に実施する部隊を外部に保有するようなイメージです。
アクセンチュアやIBM等の会社が「BPOサービス」としてそのような部隊を持っており、各種企業にサービスを提供しています。
要は「経理業務を外注化」するということでしょうか。
そうですね。要は「外注化」のことです。固定費を変動費化するのに利用したりもしますね。
メリット
- コストダウン
⇒自社で業務をするのではなく、人件費が比較的な安価な外部(外国等)に委託することで人件費を抑えることができます。 - 固定費の変動費化
⇒社内に人材を抱えた場合、人件費は固定費となりますが、外注化することによって繁忙期に人を増やす、閑散期には人を減らすといった「変動費」としての取り扱いが可能となります。 - 労働時間の削減(働き方改革)
⇒外部に業務を委託することで、社内の人間の工数を削減することが可能です。特に経理は、決算期に残業での対応が多くなることが通常ですが、BPOを利用することで残業時間を圧縮し、働き方改革を進めることができるといったメリットがあります。 - 業務プロセスの可視化
⇒副次的なメリットではありますが、業務をBPO化する過程で業務の文書化(マニュアルの作成)を進めることが多く、いままでは担当者の知見に頼って進めていた業務を可視化することで業務のブラックボックス化を防ぐことができるといったメリットがあります。
「固定費」「変動費」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
なるほど。外注化することによってメリットがたくさんありそうですね。
そうですね。ただ、導入がうまくいかない場合には、デメリットが生じる可能性もあります。
社外の専門家に「BPO(外注)」することで、逆にコストをかけて品質を向上させるといった考え方もあります。
ただ、個人的にはそのような品質担保の機能は社内で持ち、比較的単純な作業をBPO化することが理想と考えています(社内に知見を残すべきですし、あくまで主たる責任は会社側が負うべきためです)。
専門家を外部から雇うこと自体は大賛成ですが、その場合はBPO側ではなく、社内の人間(BPOを管理する側)としてのポジションでの採用が望ましいと考えます。
デメリット
- 社内にナレッジ(知見)が蓄積されない
⇒外部のBPOにナレッジが移転してしまい、業務に対するナレッジが社内に蓄積されなくなるというリスクがあります。そのため、BPOの作業結果をレビューする等、社内の人間が適切に関与することでナレッジを絶やさないようにすることが重要です。 - 導入時にコストがかかる
⇒BPOを導入するためには業務の整理、文書化、引継ぎ(以下、「KT: Knowledge Transfer」といいます)等の作業が発生します。導入時にこれらを怠ると、BPOが稼働した後に苦労することとなるため、導入時にはそれなりの負荷がかかることが想定されます。 - 費用/工数が増加するリスクがある
⇒適切にBPOを導入することで費用や工数の削減が見込めるのですが、うまくいかないと逆に工数が増えてしまう可能性があります。
たとえば、担当者へのKTがうまくいかないことによる作業ミス、それに伴うリカバリー対応、BPOからの問い合わせ対応等によって結果的に社内の工数が増えてしまうといったケースも比較的多いです。 - 決算の品質が低下するリスクがある
⇒これもKTがうまくいかないことが主な要因で起きてしまう可能性があるのですが、決算の品質が低下するリスクもあります。また、BPOの作業結果を業務を委託する側(自社)が十分にレビューしないことによってもこのようなことが起きる可能性があります。
なるほど。BPO化を進めるうえでは、これらのデメリットに留意しながら進めていく必要がありそうですね。
BPO化のポイント
そうですね。ここからは「BPO化」を進めるにあたって気を付けるべき4つのポイントについて解説を進めていきます。
業務の標準化
業務を外部にBPOする前に「業務を標準化」しておくことを推奨します。
「標準化されていない」状況というのは、たとえば、各子会社で利用しているシステムが異なる、会計方針・会計処理が異なるといった状況のことをいいます。
同じ業務でも会社によってプロセスが異なるため、業務プロセス数がとても多くなってしまいます。
まさにうちの会社はそのような状況ですね。。
このような状況で外部へBPOしようとすると、業務プロセスの数だけマニュアルを作成したり、業務プロセスの数だけKT(Knowledge Transfer)を実施したりといった手間が増えてしまいます。
また、業務が煩雑となり、混乱が生じる可能性が増えてしまうため、結果としてBPOからの問い合わせが多くなり、工数が増えるといった事態が想定されます。
なるほど。このような状況を回避するために事前に「業務を標準化」しておく必要があるんですね。
会計処理や業務プロセスを変更する場合には、監査法人との相談が必要となります。
金額的な影響を見ながら個々に相談を進めていく必要がありますが、「より良い会計処理・プロセスへの変更」であれば強気に戦っていくことを推奨します。
業務の文書化
BPOを受託する側からしても、業務受託にあたっての必須条件としていることが多いですが、委託する業務をしっかりと文書化しておくことが重要です。
弊社にはあまりマニュアルのようなものがないので、文書化を進めようと思うと大変そうです。。
そうですね。文書化は大変ですが、ここを怠ると後で苦労することになります。
適正に文書化をしていないと、担当者が変わったときに業務の目的や業務手順がわからなくなってしまい、引継ぎが適切に実施できないといったことが起きてしまいます。
また、BPOからの問い合わせを減らすという観点からも文書化を充実させることは重要です。
しっかりと文書化をすることで、最初は工数が大きくかかりますが、その後の問い合わせ対応等の工数を減らすことができます。
さきほどの「標準化」の度合いによっても大変さが変わってきそうですね。
あくまで一例ですが、文書化(業務マニュアルの作成)の際には、以下のような項目を盛り込んでおくと良いかと思います。
- 業務内容、手順
- 業務の目的
- 関連する前後の業務(インプット、アウトプット)
- 必要な工数
- 作業の頻度
- 関連部署・担当者
- 業務フロー図
十分な引継時間の確保
デメリットのところでも触れましたが、十分な引継ぎ(KT)を実施することが重要です。
十分な引継ぎができない場合、かえって問い合わせの工数が増加してしまったり、決算の品質が低下してしまう恐れがあります。
これも大変そうですが、文書化と同じで怠ると後々苦労するので、最初に頑張っておくほうが良さそうですね。
そうですね。いくら十分なKTを実施したとしても、実際に業務をしていくなかで問い合わせは当然来るのものですが、最初にしっかりとKTしておくことで後々ラクになると思います。
委託元の積極的な関与
最後に、BPOに業務を丸投げしないというのも1つの大きなポイントです。
社内の人間が楽をするためにBPOをするという考え方自体は間違ってはないのですが、丸投げをした結果、BPOの作業管理ができなくなると、様々なデメリットが出てきます。
社内にナレッジが蓄積されないとか、決算の品質が下がるということでしょうか。
そうですね。特に社内の人間が委託業務に対する理解がなく、BPO頼りになってしまうといったケースが起きてしまうと、業務の品質を確保できなくなる可能性もあります。
あくまで「委託」であり、委託元が適切にBPOの作業管理を行うことが重要です。
今回は、経理業務のBPR(Business Process Re-engineering)の一環として行われることの多い「BPO化」について解説を進めていきます。