自社株を買うということは、「配当金を支払う」のと同様に株主への還元を意味しています。
配当金と同じ、、?ピンと来ないですね。。
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「自社株買い」とは?
「自社株買い」とは、自らの資金を使って株式市場から自社の株式を購入することをいいます。
自社株買いを行うことによって、株主がメリットを受けることができるため、「配当金の支払い」と同様に株主に対する還元策の一環として行われます。
会社が軍資金を集める際には、「株式市場(投資家) ⇒ 株式会社」というお金の流れとなりますが、自社株買いをした場合は、「株式会社 ⇒ 株式市場(投資家)」という逆の流れになります。
んー、まだよくわかっていないですね。株主がメリットを受けることができるというのはどういうことでしょうか。
「自社株買い」による数字影響
自己株買いによって、以下のような数字に影響が出てくるため、結果的に株主にはメリットがあります。具体的な数字例を見ながら理解を進めていきましょう。
- 1株あたり利益(EPS)が増加する
- ROEが向上する
1株あたり利益(EPS)が増加する
市場に流通する株式数が減ることによって、1株あたりの利益が増加するため、「山分けできる金額」が大きくなります。これが株主にとってのメリットとなります。
例えば、以下のような会社の事例を考えてみます。
- 当期純利益:50,000,000円
- 流通株式数:1,000,000株
- 200,000株の自社株買いを実行
自社株買いの実行前は、5千万円の利益を100万株で山分けすることになるため、1株あたりの利益は、50円(= 50,000,000 ÷ 1,000,000)です。
一方、自社株買い後は、5千万円の利益を80万株で山分けすることになるため、1株あたりの利益は、62.5円(= 50,000,000 ÷ 800,000※)です。
自社株買い後の流通株式数:800,000株(=1,000,000株 – 200,000株)
※金庫株として保有する場合も償却する場合も流通株式数は減少します。
1株あたりの利益が増えることで、自分の持っていた株の価値が上がるという効果があるのですね。
そうですね。その結果、通常は株価が上昇することになります。
「株価 = EPS(↑) × PER(→)」という関係にあり、理論上、PERは「自己株取得」によって変動しないことから株価は上昇します。
理論上、PERは「会社に対する期待値」で増減するのですが、自己株取得というニュースによって市場が反応し、結果的にはPERが増減することも多いです。
なるほど。自社株買いをすることによって株価を引き上げることによって、株主へ還元するということですね。
そのとおりです。「配当金の支払い」は、直接的に株主にお金をばらまくことで「インカムゲイン」としての収入となりますが、
「自社株買い」は、間接的に株主市場にお金をばらまく結果、株価上昇が見込まれるため「キャピタルゲイン」としての収入となります。
「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
ROEが向上する
自社株買いをすると、ROEも向上することになります。自己株式は「純資産(株主資本)のマイナス」として会計処理されるためです。
ちょっとよくわからないです。。
株式を発行し、投資家からの資金を受け入れた際の仕訳は以下のとおりです。
投資家(市場)から出資を受け入れたとき:(借方)現金預金 /(貸方)純資産
自社株買いは、その逆(投資家、市場へお金を払い戻す)になるので、以下の仕訳となります。
自社株買いによって市場へお金を払い戻すとき:(借方)純資産 /(貸方)現金預金
株式発行して得た軍資金(株主資本)を再度市場に還元するため、純資産(株主資本)のマイナスとなるということですね。
そうですね。ROEは、株主資本を分母とて計算されるため、株主資本が小さくなれば、ROEが引き上げられることになります。
ROE(%)=当期純利益 ÷ 株主資本 × 100
例えば、以下のような会社の事例を考えてみます。
- 当期純利益:50,000,000円
- 純資産(株主資本):1,000,000,000円
- 200,000株(=200,000,000円)の自社株買いを実行
自社株買いの実行前は、10億円の資本を元手5千万円の利益を稼いだことになるので、5%(= 50,000,000 ÷ 1,000,000,000)です。
一方、自社株買い後は、8億円の資本を元手5千万円の利益を稼いだことになるので、62.5%(= 50,000,000 ÷ 800,000,000(※))です。
自社株買い後の純資産:800,000,000円(=1,000,000,000円 – 200,000,000円)
なるほど。自社株買いをすることによってROEを引き上げる効果もあるんですね。
そうですね。余剰となっているキャッシュを株主に還元することによって、その分資産効率が良くなるというイメージです。
「ROE」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
自社株買いのメリット
メリット(投資家目線)
自社株買いのメリットを改めて整理していきましょう。まずは「投資家目線」でのメリットです。
- 一株当たり利益(山分け金額)が増加する
- 結果として、株価やROEが上がる
これは先ほど見てきたような項目ですね。たしかに投資家(株主)にとってメリットがありそうです。
メリット(企業目線)
- 株主還元により投資家へのアピールになる
- ROEが向上することにより会社業績が良く見える
- 株価が割安であるという経営者からのメッセージを市場に伝えることができる
経営者からのメッセージとはどういうことでしょうか。。
自社株買いをするということは、自社の株価を割安に見ている(本来はもっと価値があるのに割安で放置されている)と企業が判断しているという「経営者からのメッセージ」でもあるので、株価の上昇につながることが多いです。
なるほど。たしかに株価が割高のタイミングであえて自社株を購入するということはやらないですもんね。
自社株買いのデメリット
デメリット(投資家目線)
投資家からすると、基本的にはデメリットはありません(配当金を増やすのと同じようなイメージです)。
ただし、過度な自己株買いによって会社の資金繰りが悪化するといった間接的なデメリットが発生する可能性はあります。
また、強いて言うと、自社株買いによって株価の動きが激しくなる(EPS増による株価上昇、それに伴う利益確定売り等、取引量が増える傾向にあります)といったデメリットも考えられます。
デメリット(企業目線)
- 資金繰りが悪化する可能性がある
- 自己資本比率が低下する
上記のようなデメリットが考えられますが、自己株の取得をする場合は、余剰資金にて行われることが通常です。
資金繰りの悪化をさせてまで自己株を取得する(株主還元を行う)というのは、経営判断として誤っていますので、デメリットとしてあまり考える必要はないかとも思います。
なるほど。自己資本比率が低下するというのは、財務諸表を分析する上で織り込んでおいたほうが良さそうですね。
「自社株買いXX億円」といったニュースをよく見かけるのですが、自社の株を買うというのはどういうことなのでしょうか。