(図解)「PBR1倍割れ」銘柄に注目 ~東証からの改善要請、PBRとは?~
【難易度★★☆☆☆】

会計士

先日、東京証券所から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」という要請が出され、「PBR」が1倍割れとなっている企業等に対する要請が公表され話題となりました

(東証HPより抜粋、著者がハイライト)

東証HP:資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて

https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html

相談者

そもそも「PBR」ってなんでしたっけ。。

会計士

今回の記事では「PBRとは?」といった基礎的な内容から解説をしていきますので、理解を進めていきましょう。

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東証の要請で触れられている「ROE」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

PBRとは?

PBR

「PBR」とは、Price Book-value Ratioの略のことで、株価を一株あたり純資産(株主資本)で割った指標のことをいいます。

BSの純資産と株価を比較することで「株価の相場感」を図ることができる指標です。

PBRの計算式

「PBR」は、以下の式で計算することができます。

PBR(株価純資産倍率)= 株価÷1株あたりの株主資本

会計士

みなさんも日常生活で買い物する際には、「相場」をもとに購入の判断をされると思いますが、株も同じような考え方ができます。

例えば、レタスであれば100円~200円くらいが相場だなといったような感覚ですが、株価の場合にも「PBR」等を参照して1倍~5倍くらいが相場だなといった感覚で売買を行うことになります。

相談者

少しイメージは湧きましたが、まだ難しいですね。。

会計士

式だけ見るとよくわからないと思いますので、実際の事例を見てみましょう。

株主資本とは

まずは、株主資本(≒解散価値)という概念について学習します。非常にシンプルなケースですが、例えば、10億円の建物を所有しており、株主からの出資が6億円、借金が4億円ある会社をイメージします。そうすると、「BS」は以下のとおりになります。

この状態で会社が解散(事業を終了)した場合には、建物を10億円で売却し、入ってきたお金で借入金4億円を返済し、残った6億円を株主全員で分けることになります。ここでいう6億円を株主資本(≒解散価値)といいます。これは、株主にとっての「正味の財産」を意味します

株主資本とは、解散価値とは
相談者

なるほど。たとえば、トヨタが来年で解散するとした場合、トヨタが持っている工場や商品を全部売却して、借金を返済して、残ったお金を株主で山分けするということですね。実際にはあまりイメージできないですが、、

会計士

そういうことです。あくまで仮定の話ですが、「株主資本」とは、解散した場合の山分け財産の価値というイメージです。

次に、「PBR」の計算を実際に見てみましょう。先ほどの会社が1,000,000株を発行していたと仮定します。その場合、「株価」はいくらになるでしょうか。

相談者

6億円の価値がある会社を1,000,000株で山分けする権利と考えられるので、1株あたり600円(6億円÷1,000,000株)ですか?

会計士

基本的な考え方はそれでOKです。ただし、これは1株あたりの株主資本」の金額になります。「1株あたりの株主資本」と「実際の株価」の違いを解説していきます。

1株あたり株主資本=株価?

実際の「株価」はその会社の将来性をもとに取引がされるので、600円とはなりません。将来的に儲かりそうな会社であれば、600円より大きくなりますし、場合によっては600円を下回るケースもあります。

たとえ話ですが、一般的に数百円程度で取引されるチョコレートも、高級なものであれば、5,000円を超えることがあるのと同じで、本当に価値があるものであれば、「相場」よりも高値で取引されることがあります。

相談者

「1株当たりの株主資本」と「株価」は別物なんですね。

適正な「PBR」はどのくらい?

会計士

では、適正な「PBR」の水準がどの程度なのかといった点を見ていきましょう。

「PBR」の計算シナリオ

先ほどの会社を例に「PBR」の計算を複数のシナリオで見ていきましょう。

仮に株価が3,000円であった場合、PBRは、

PBR = 3,000円(株価)÷600円(1株当たりの株主資本)=5倍 となります

一方で、株価が600円であった場合

PBR = 600円(株価)÷600円(1株当たりの株主資本)=1倍 となります

さらに、株価が300であった場合

PBR = 300(株価)÷600円(1株当たりの株主資本)=0.5倍 となります

PBRとは
相談者

あれ、解散したら600円がもらえるはずなのに、株価が300円になるということがあるんですか!?

会計士

そうなんです。なので、「1倍」を切っている場合には、株価が割安な可能性があります。

「PBR」の目安は「1倍」

「PBR」は、「1倍」というのが1つの目安となります。東証の要請でも触れられていますが、日本を代表するような商社、銀行、自動車会社等の株価が「PBR」が「1倍」を下回っているということがザラにあります。そのため、日本株は割安であるとみる専門家、投資家もいます

ただし、「BS」に計上されている資産が不良債権を多額に含んでいる、外部に売却できないような陳腐化した資産を計上しているといった様々な要因により、「PBR」が「1倍」以下になることが妥当というケースも多々ありますので、あくまで目安として捉えましょう。また、業種によって水準が変わるケースもありますので、比較分析も有用です

相談者

なるほど。「PBR」が1倍の場合には、割安の可能性があるということですね。
「PBR」を確認して投資をしてみようと思います。

会計士

そうですね。PBRが1倍を割れるということは、「会社を解散して精算する方が良い」といった評価とも言えるので東証としては改善の要請を出しています。

相談者

そう言われると非常にインパクトがありますね。。

PBR1倍割れの企業について、今後注目してみようと思います。

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PBRを改善するためには?

相談者

東証から改善要請が出ているということですが、PBRを改善するためにはどうすれば良いのでしょうか。

会計士

PBRの計算要素は、①株価、②株主資本です。そのため、これらを軸に考えると良いですが、②株主資本を減少させてPBRを上げるというのは本末転倒ですから、①株価を向上させることでPBRを上げていくというのがポイントになります(②として、自己株取得によって株主資本を下げるという手はありますが、今回は割愛します)

株価の向上に向けて

株価をどのように向上させるかというのは経営学な話であり、専門外ではあるのですが、以下のような観点が考えられます。

  • 新規事業の創出による企業価値、株価の向上
  • 不採算事業の撤退による企業価値、株価の向上
  • 既存ビジネスの収益性の改善

過去情報である決算書だけでなく、企業が今度どのように成長していくのかといった将来情報も加味したうえで投資家は企業価値を判断します。そのため、将来的に会社がどのように成長していくのかといった経営計画を具体的に打ち出していくことで株価の向上が見込めます

相談者

なるほど。PBR1倍という目安を意識しながら、経営計画を立てていくことが求められているといったイメージですね。

会計士

そうですね。より投資家の観点を意識しながら、経営を進めていくことが重要であるというメッセージだと考えています。

本記事のまとめ
  • PBR(株価純資産倍率)」は、Price Book-value Ratioの略のことで、一株あたり純資産のことをいう
  • 「PBR」が「1倍」未満の場合には、解散価値を下回ることとなり、株価水準が割安の可能性がある
  • そのため、東証はPBR1倍割れの企業に対して2023年3月に改善要請を出しており、今後の各社の対応に注目が集まっている