(図解)簡単に理解できる「ROIC」1/2 ~ROEの進化版~
【難易度★★★★☆】

【難易度★★★★☆】以上は「実務家向け」の内容が含まれますので、ご留意ください。

会計士

今回は収益性を測る指標である「ROIC(ロイック)」について解説を進めていきます。

相談者

以前の記事で「ROA」や「ROE」といった指標を見てきましたが、同じようなものでしょうか。

会計士

そうですね。「ROIC」は「ROE」の進化版といった呼ばれ方もするように、より厳密に収益性を測定するために作られた指標です。少しややこしいので、2回に分けて説明を進めていきます。

今回は「数式を理解する」ことを目的に解説を進めていきます。

「ROIC(ロイック)」は、「Return On Invested Capital:投下資本利益率」の略です。

「ROIC」とは?

会計士

「ROIC」は、「ROA」や「ROE」と同様に、分子がPLの利益、分母がBS残高という構成で、以下の計算式で計算されます。

計算式

ROIC(%) = 税引後営業利益(NOPAT)÷ 投下資本 × 100

相談者

「NOPAT」やら「投下資本」やら見慣れない用語が多いですね。。

会計士

そうですね。ここからは、「NOPAT(ノーパット)」や「投下資本」というそれぞれの計算要素について解説を進めていきます。

なお、「ROA」「ROE」「ROIC」のそれぞれの計算式をまとめたのが以下の表です。

「NOPAT(ノーパット)」は、「Net Operating Profit After Tax:税引後営業利益」の略です。

「NOPAT」とは?

会計士

まずは「NOPAT」について解説を進めていきます。

「NOPAT」は「営業利益」に近い概念ですが、税率を考慮する必要があります。

計算式

NOPAT = 営業利益 ×(1-税率)

相談者

「営業利益」に税金がかかることなんてあるのでしょうか。

会計士

実際に税金がかかるのは「税金等調整前利益」なので、ここで算出する税額はあくまで仮の数字です。

仮に営業利益から税金が支払われたと仮定した場合、いくら会社に営業利益が残るかといった数値を示すのが「NOPAT」です。

「ROE」や「ROA」が「当期純利益」を使用するのに対して、「ROIC」は「本業による収益性」を測定することにフォーカスしているため「営業利益」をベースとした数字を利用しています

あわせて読みたい

「営業利益」「当期純利益」といった段階利益の概念については、以下の記事をあわせてご参照ください。

相談者

なるほど。「税引き後営業利益」という「計算上の利益」なんですね。

「投下資本」とは?

会計士

次に「投下資本」について解説を進めていきます。

「投下資本」は「総資産」と「純資産」の中間に近い概念で、以下の計算式で計算されます。

計算式

投下資本 = 有利子負債 + 株主資本

相談者

負債ではなく、有利子負債のみを計算に含めるんですね。

会計士

そうですね。計算式の意味合いは次回の記事で解説を予定していますが、運転資本を除き、借入金等の「有利子負債」のみを含めるというのがポイントです。

相談者

「有利子負債」以外の負債というのはそもそもどういうものが該当するのでしょうか。

会計士

たとえば、買掛金や未払金といった営業債務が該当します。これらは第三者にお金を借りているという性質のものではなく、一次的に後払いをするために生じている負債で、「運転資本」と呼んだりもします。

相談者

なるほど。これらの運転資本を除き「有利子負債」に限定することで、いわゆる純粋な「他人資本(株主以外からの資金調達)」のみを計算に含めるということですね。

会計士

そうですね。これらの計算を行うことで「資金調達(他人資本+自己資本)したお金を使っていかに効率よく本業で稼ぐことができたのか」といった収益性を計算することが可能となります

次回の記事で「ROIC」のメリットやデメリットを深堀していきますので、よろしくお願いいたします。

本記事では、簡便的に「純資産」=「自己資本」=「株主資本」として記載をしていますが、厳密には異なる概念です。なお、ROICの計算では「株主資本」を利用します。

あわせて読みたい

「純資産」「自己資本」「株主資本」の違いについては、以下の記事をあわせてご参照ください。

本記事のまとめ
  • 「ROIC」とは「NOPAT÷投下資本」で計算される収益性を図る指標のこと
  • 「NOPAT」とは「営業利益×(1-税率)」で計算される税金考慮後の営業利益のこと
  • 「投下資本」とは「有利子負債+株主資本」で計算される純粋な資金調達源泉のこと

「決算書」ってどこで見れるの?

上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。

  1. 会社のHP
  2. EDINET

①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。

(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。

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