【難易度★★★★☆】以上は「実務家向け」の内容が含まれますので、ご留意ください。
「問題編」「回答編」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
分析(期間比較)
今回の記事では、分析の続編ということで3社(スシロー、ケンタッキー、丸亀正麺)の「期間比較」を実施してみます。ここでは主要な指標である「売上」「総資産」「純利益」の推移について分析をします。
「財務諸表分析の基礎」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
過去の数字を「期間比較」のために折れ線グラフに落としたものが以下の図になります。
- 2019年⇒2020にかけて総資産が大きく上昇している
- 売上は堅調に増加傾向にある
- 純利益は多少の増減はあるものの著増減はない
⇒堅調に成長していることが読み取れる
- 売上・総資産ともに著増減はなし
- 純利益は多少の増減はあるものの、激しい増減はない(2018年はやや落ち込み)
⇒成熟・安定している傾向にあると読み取れる
- 2019年⇒2020にかけて総資産が大きく上昇している
- 売上は堅調に増加傾向にある
- 純利益は2019年期に一度大きく落ち込みを見せている
⇒利益に増減があるものの、堅調に成長していることが読み取れる
分析(IFRS16号の影響)
スシローと丸亀正麺の2社は2020年に総資産が大きく増加しているようですが、これはなぜでしょうか。「総資産」はあまり大きく増減するものではないと思うのですが。
「スシロー」「丸亀正麺」の2社は2020年に大きく総資産が増加しているのに対して、「ケンタッキー」はその傾向が見られません。これは、会計基準の違いによる影響が大きいです。
「スシロー」「丸亀正麺」の2社は「IFRS」を適用しているのに対して、「ケンタッキー」は「日本基準」を適用しています。「IFRS」を適用している企業において「IFRS16号(リース)」という基準が新しく適用されることとなり、これによってリースに関する資産(使用権資産といいます)が大きく計上された結果、2社の総資産が大きく計上されています。
特に外食産業では店舗をテナント契約で借りることが多く、IFRS16号適用による影響が大きかったものと考えられます。
「スシロー」の有価証券報告書を読むと、2020年9月期からIFRS16号を適用していること、その結果、約1,000億もの「使用権資産」(リースに関する資産)が計上されたことがわかります。
IFRS16号の導入は財務諸表の見え方に大きく影響を与えましたが、基本的には会計基準の変更によってここまで大きく影響を受けることは多くありません(当面はこのような「IFRS」の大規模な改定は予定されておらず、今回はイレギュラーケースです)。
「IFRS16号」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「IFRS」とは?という方はこちらもあわせてご参照ください。
分析(減損損失の影響)
丸亀正麺の2019年の「純利益」がかなり低くなっているのも気になります。
丸亀正麺の2019年度の純利益が大きく落ち込んだ理由は「PL」を見ると見えてきます。2018年に約2億程度であった「減損損失」が2019年度には約36億と大きく増加しており、これが利益を圧迫する要因となっています。
「減損損失」とは、価値が見込めなく固定資産の価値を減額する会計処理のことをいいます。今回のケースでいうと、不採算店舗について固定資産の計上額を大きく切り下げ、損失として計上したことになります。「減損損失」を計上するということは将来の減価償却費を前倒しで計上するような意味合いを持つため、その後の業績がよく見えるという副次的な効果もあります(日産の「V字回復」はこの「減損」が大きく関係しており、「ゴーン・マジック」とも呼ばれています。詳細について別の記事で近日解説予定です)。
「減損損失」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
本記事は以下の記事に関する続編です。「問題編」「回答編」もあわせてご参照ください。