「問題編」について、以下の記事もあわせてご参照ください。
回答
財務諸表分析の回答は以下のとおりです。
- A社⇒スシロー(スシローグローバルホールディングス)
- B社⇒ケンタッキー(日本KFCホールディングス)
- C社⇒丸亀正麺(トリドールホールディングス)
スシロー
安くて美味しいお寿司が食べられるスシローですが、決算書を見てみると「原価率」が高いことがわかります。飲食業の原価率は30%程度が目安といわれていますが、スシローの原価率は50%近い数字となっており、やはり良いネタを安く提供しているということがわかります。
ケンタッキー
ケンタッキーの売上が思ったよりも低いのでは?と思った方もいるかもしれません。
売上が低く見える1つの要因として、ケンタッキーの店舗形態があげられます。ケンタッキーの売上は、大きく分けると「直営店売上」「フランチャイズ売上」の2つです。後者の「フランチャイズ売上」の場合、「チキンの販売代金」が「売上」として計上されているのではなく、「フランチャイズ料」として手数料のような形で「売上」が計上されます。そのため、会社として「売上」に計上される金額としてはすべてが直営店だった場合と比べ、小さく見えます(また、フランチャイズ店はあくまで別会社のため、フランチャイズ店の資産はケンタッキーの「BS」に計上されません)。
この点、ケンタッキーでは、決算上の「売上」とは別に「チェーン売上」というものも決算説明資料で開示を行っています(以下、決算説明のP.9に記載があります)。これは「フランチャイズ売上」部分についても「チキンの販売代金」ベースで計上したものを集計した数字になります。
丸亀正麺
丸亀正麺といえば、「ホノルル店」も行列ができるほど人気で、日本以外でも人気のある外食チェーンです。実際に海外の売上がどのくらいあるの?と気になる方もいるかと思いますが、「有価証券報告書」の「セグメント情報」という注記情報を見るとセグメントごと(各事業ごと)の売上を見ることができます。
これを見ると、売上全体の2割以上を「海外事業」が占めていることがわかります。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
分析①
ここからは、今まで学習してきた「財務諸表分析」の知識を使って、これら3社の分析を進めていきます。
安全性分析
まずは「安全性分析」です。「流動比率」「当座比率」「自己資本比率」の3つの指標を見てみます。
各指標の解説については、以下の記事もあわせてご参照ください。
簡便的に「自己資本」≒「純資産」として計算をしています(以下同)。
数字を見てみると、スシロー、丸亀正麺の2社はいずれの数値も目安を下回る数字となっています。一方、ケンタッキーはいずれの指標も目安を上回っており、財務的に安全であると判断することができます。
数字が低くなっている2社については、「ちゃんとお金に余裕があるのか?」といった懸念があるため、財務的な安全性をさらに分析するために、「キャッシュフロー計算書」もあわせて見てみましょう。
キャッシュ・フロー分析
「キャッシュ・フロー計算書」の分析では、「営業CF」「投資CF」「財務CF」がそれぞれどのような動き(プラスなのか、マイナスなのか)をしているのかを見ていきます。
「キャッシュ・フロー計算書」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
スシロー、丸亀正麺のキャッシュ・フローを見てみると、いずれの会社も「営業CF」が大きくプラスとなっており、本業で十分に稼いでいることがわかります。
また、「投資CF」が大きくマイナスとなっており、本業で稼いだお金を将来への投資に向けていることがわかります。
さらに、「財務CF」もマイナスとなっていることから、本業で稼いだお金で過去の借金を返済していることがわかります。
いずれの企業も手元の現金預金・流動資産が少なくなってはいるものの、本業で十分にお金を稼いでおり、かつ、投資や借金の返済にお金を回しています。そのため、財務的安全性についてはあまり心配する必要はないと思われます。
収益性分析
「収益性分析」では、「ROA」「ROE」「売上高利益率」の3つの指標を見ていきます。
各指標の解説については、以下の記事もあわせてご参照ください。
3社の中で、「ROA」については、ケンタッキーが一番高い数字となっており、「ROE」はスシローが目安の8%~10%を上回る数字となっています。「ROE」がなぜこのような高い数字となっているのか、デュポンシステムを使ってさらに分析を進めていきます。
「デュポンシステム」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
ケンタッキーの「ROA」が一番高くなっているのは、他2社との会計基準の違いも影響しています(詳細は「分析②」で解説をしています)。
スシローの「ROE」の構成要素を見ると、「売上高利益率」と「財務レバレッジ」が高いことによって約13%という数字となっていることがわかります。特に「財務レバレッジ」が高く、低金利を生かして積極的に他人資本を利用していることがわかります。
「財務レバレッジ」が大きいと、収益性が高まる一方で、安全性が低くなるという影響があります(トレードオフの関係)。先ほどのキャッシュ・フローの分析を見る限り、安全性に大きな問題はないと思われますので、「良い借金」によって収益率を加速させていることがわかります。
「財務レバレッジ」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
決算書を少し見るだけで会社の状況がいろいろとわかりますね。
分析②
別記事でもう少し深堀した分析をしていますので、こちらもぜひ読んでみてください(会計基準の知識が多少必要になってきますので、難易度は★★★★となっています)。
「分析後編」は、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
次の記事で詳細を解説していますが、数年前の数字を使って分析すると「ROA」「ROE」といった項目は分析結果が大きく変わってきます(会計基準の変更によって総資産が約2倍になるという事態がおきたためです)。そのため、単年での分析ではなく、複数期間のデータを用いて分析することをおススメします。
「財務諸表分析の基礎」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
本記事は以下の記事の「回答編」です。問題編もあわせてご参照ください。