(図解)決算情報の宝庫「有価証券報告書」ってなに? ~決算書を読んでみる~
【難易度★★★☆☆】

有価証券報告書とは?

有価証券報告書とは

「有価証券報告書」とは、「金融商品取引法」に基づいて、会社が提出することを求められている法定開示書類のことをいいます。

有価証券報告書
会計士

ざっくり言ってしまうと「決算書」のようなものですが、いわゆる決算書よりも情報量が多いのが特徴です。有価証券報告書には以下のような内容が記載されています。

有価証券報告書
相談者

たくさん見出しがありますが、全部で何ページくらいあるんですか?

会計士

会社によって様々ですが、だいたい100ページ~300ページくらいのボリュームになります。かなりの情報量となっており、有価証券報告書は「企業情報の宝庫」と呼ばれます。

相談者

え、、そんなにページ数が多かったら読む気にならないです。。。

会計士

個人的には「有価証券報告書」を上から下まで本のように読む必要はないと思っています。あくまで知りたい情報を参照するための辞書のように読んでいただけると良いかと思います

そのためには、どのパートにどのような内容が書いてあるのかを理解しておく必要があります。そこで、今回は有価証券報告書の各パートに記載されている内容の概要につき、解説をしていきます。(自分の興味のある会社の有価証券報告書を片手に解説を読んでみることをおすすめします

相談者

有価証券報告書はどれくらいの頻度で公表されるのでしょうか。

会計士

有価証券報告書は、年に1回の提出となっています。これとは別に3か月に1度のペースで「四半期報告書(半期報告書)」という開示書類を提出することとなっています。

あわせて読みたい

「四半期報告書(半期報告書)」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

改正により「四半期報告書」は「半期報告書」へと変わりました。詳細については、以下の記事をご参照ください。

上場している会社の有価証券報告書は以下のページから見ることができます。

  1. 会社のHP
  2. EDINET

①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPのつくりや呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。

(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

他の開示書類との関係

会計士

有価証券報告書と同じような決算書類として「決算短信」「四半期報告書(半期報告書)」についてもおさえておきましょう。

決算短信

「決算短信」とは、上場会社が3か月に1度のペースで作成する決算速報のことです。

決算速報としての位置づけで、「有価証券報告書」や「四半期報告書(半期報告書)」よりも早いタイミングで開示されます。法律で作成が求められるようなものではないのですが、上場している会社は、証券取引所の規程に基づき作成をすることが求められています(上場していない会社では、証券取引所の規程が適用されないため、作成義務はありません)。

規程上、決算日(3月末など)から45日以内に開示することが要求されていますが、30日以内に提出することがより望ましいとも言及されており、各社で決算の早期化に取り組んでいます。

「四半期報告書(半期報告書)」や「有価証券報告書」よりも情報量は少なく、決算速報という意味合いが強いIR情報となっています。また、来季の予想値が公表されている点も1つの特徴です。

会計士

有価証券報告書は、決算日(例:3/31)から3か月以内に提出することとされています。そのため、6月の中旬~下旬にかけて公表する企業が多くなっています。

相談者

「決算短信(決算速報)」は、45日以内なのですね。なぜ、有価証券報告書は3か月と開示までの期間が長いのでしょうか。

会計士

そうですね。また、3か月に1度提出する「四半期報告書(半期報告書)」も45日以内となっています。年度末における「有価証券報告書」は記載のボリュームも多いことから、提出までの期間に余裕が設けられています

相談者

100ページ以上あるんですもんね。その分、時間的な余裕はあるということですね。

会計士

そうですね。最後に各書類の関係をまとめると以下のとおりです。

1Q、3Qの四半期報告書は廃止され、2Qの「半期報告書」へ変更となっています(上記参照)。

有価証券報告書の読み方(例)

会計士

有価証券報告書の読み方の一例として、「主要な経営指標の推移」⇒「BS」「PL」「CF」⇒「注記情報」⇒「指標分析」といったように、まずはハイレベルな情報から読み始め、徐々に細かい注記情報等を見ていくのがおすすめです

相談者

なるほど。BS、PLは決算書の基本ですね。注記情報はどういった項目を読むと良いのでしょうか。

あわせて読みたい
会計士

「セグメント情報」という注記は会社のビジネスを事業等の軸で細分化して分析を行うのに適しています。まずは、このあたりから読み始めると良いかと思います。

セグメント情報
会計士

また、「収益の分解」という注記も会社の事業を理解するのには適していますので、あわせて読んでみると良いかと思います。会社によって粒度は異なりますが、製品・サービス別、地域別といった軸で収益(売上)の金額が細分化されています。

相談者

なるほど。指標という観点ではどのような指標を見るのが良いでしょうか。

会計士

代表的な指標としては「営業利益率」「純利益率」「ROE」といった指標を見ておくと良いかと思います。具体的な事例もあわせてご参照ください。

相談者

なるほど。具体的な分析事例を参考にしながら有価証券報告書を読んでみようと思います。

本記事のまとめ
  • 「有価証券報告書」とは、「金融商品取引法」に基づいて、会社が提出することを求められている法定開示書類のこと
  • 「有価証券報告書」は年に1度のペースで提出することが求めれており、3月決算の会社であれば6月に提出されることが多い(90日以内に提出とされているため)
  • 「主要な経営指標の推移」⇒「BS」「PL」「CF」⇒「注記情報」⇒「指標分析」といったように、まずはハイレベルな情報から読み始め、徐々に細かい注記情報等を見ていくのがおすすめ