私も大好きです。いつも並んでいるので、儲かっているイメージがありますね。
決算書を見ることで「会社の真の姿」を把握することができるので、早速分析を進めていきましょう。
なお、マクドナルドの本社はアメリカですが、日本法人も東証の「スタンダード市場」に上場しています。
「上場」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
正式には「日本マクドナルドホールディングス」ですが、本記事では「日本マクドナルド」と省略して記載します。
Contents
主要な経営指標の推移
まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです。
主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成してみましたので、あわせて見てみましょう(単位:百万円)。
売上、利益ともに安定しているようですね。直近(2021年)も業績が良さそうに見えます。ROE(自己資本利益率)は、やや下がってきているようですね。
そうですね。売上、経常利益、営業利益は過去最高だったようです。
また、「ROE(自己資本利益率)」ですが、「自己資本比率」が増加していることが低下の理由かと推測されます。
「ROE(自己資本利益率)」には、「財務レバレッジ効果」が働くので、自己資本比率とは逆相関の関係にあります(詳細は後述する「デュポン分析」もご参照ください)。
「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結決算書
次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。
以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。
連結BS
まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。
純資産の割合が大きいですね。
そうですね。過去の水準と比較して徐々に純資産の割合が増えていることから、内部留保(儲かったお金を社内に蓄積すること)が増えていると推測されます。
配当してもさらにお金が余っている状況ということでしょうか。
傾向だけ見ると、そのとおりですね。実際に以下の決算数値を見てもここ数年で大きくお金を貯めこんでいることがわかります。
- 【現金預金】2017年12月末残高が25,969百万円に対して、2021年12月末残高は、75,267百万円と大きく増加(3ヶ月超の定期預金25,000百万円含む)
- 【利益剰余金】2017年12月末残高が66,369百万円に対して、2021年12月末残高は、132,179百万円と大きく増加
なるほど。将来的に増配(配当額を増やす)するようなこともあるかもしれないですね。
そうですね。直近の配当実績を見ても増配されているのですが、それでも内部留保が増えている傾向を見ると、さらなる増配の可能性もあります。
あるいは、将来の業績低迷時のリスクヘッジのために手元にキャッシュを残しておく可能性もあります。また、将来的に大きな投資があるかもしれません。いずれにせよ今後のキャッシュの動向に注目ですね。
連結PL
次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。
最終的な利益率が「7.5%」となっていて、PLを見る限りで大きな問題はなさそうですね。
全店売上高(フランチャイズ分も手数料ではなく、売上としてカウントした数字)は、6,520億円と発表されています。
「フランチャイズ収入」については、ケンタッキーの事例もあわせてご参照ください。
連結CF
最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています。
本業で儲かったお金をもとに将来投資や借金の返済に回しているんですね。期首から期末にかけてキャッシュが増えていることから、お金を貯めこんでいることもわかりますね。
そうですね。分類でいうと「優良型」に該当しますので、キャッシュ・フローのパターン的には問題なさそうです。
「決算書の基礎」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
注記情報
もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。
セグメント情報
日本マクドナルドは「単一セグメント」のため、セグメント情報の開示を省略しています。
詳細な分析ができないですね。。
そうですね。。幅広い事業を展開しているわけではないので、連結財務諸表における開示で十分というスタンスですね。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益の分解
日本マクドナルドは「日本基準」を採用しているため、収益の分解を開示していません。
これもないんですか。。たしかに「収益の分解」は、IFRS基準や新収益基準における開示要求でしたね。
ただ、翌期から「新収益基準」が適用されるため、来年は開示される見込みです(関連する注記情報を抜粋しています)。
なるほど。どのような開示がされるのか楽しみですね。
「収益の分解」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「新収益基準」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
指標分析
ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。
安全性分析
流動比率
日本マクドナルドHDの「流動比率」は175.5%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- KFCホールディングス ⇒ 179.5%
- モスフードサービス ⇒ 210.6%
自己資本比率
日本マクドナルドの「自己資本比率」は74.3%と目安の50%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- KFCホールディングス ⇒ 55.6%
- モスフードサービス ⇒ 69.4%
「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「安全性」という観点だと特段問題はなさそうですね。
収益性分析
次に「収益性」の指標を見ていきます。
利益率
- 売上総利益率 ⇒ 20.0%
- 営業利益率 ⇒ 10.9%
- 税引前利益率 ⇒ 10.3%
- 当期純利益率 ⇒ 7.5%
なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2022年3月期の決算短信より計算しています)。
- 売上総利益率 ⇒ 42.0%
- 営業利益率 ⇒ 6.3%
- 税引前利益率 ⇒ 6.7%
- 当期純利益率 ⇒ 4.7%
- 売上総利益率 ⇒ 48.0%
- 営業利益率 ⇒ 4.4%
- 税引前利益率 ⇒ 5.9%
- 当期純利益率 ⇒ 4.4%
ケンタッキーと比べると「粗利率(売上総利益率)」の数字が低いように見えます。
直営店とフランチャイズの割合が影響しているかと推測されます(ケンタッキーはフランチャイズが多い)。「フランチャイズ収入」については、以下の記事もあわせて見てみましょう。
「フランチャイズ収入」の分析については、ケンタッキーの事例もあわせてご参照ください。
ROA
日本マクドナルドの「ROA」は9.7%と目安の5%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- KFCホールディングス ⇒ 10.1%
- モスフードサービス ⇒ 5.1%
ROE
日本マクドナルドの「ROE」は13.3%と目安の8%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- KFCホールディングス ⇒ 18.2%
- モスフードサービス ⇒ 7.3%
ROA、ROEの水準はいずれも目安を上回っていますし、悪い水準ではなさそうですね。
デュポンシステムによる分解
ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。
- 利益率 ⇒ 7.5%
- 総資産回転率 ⇒ 1.29
- 財務レバレッジ ⇒ 1.37
目安を上回っていますし、悪い水準ではなさそうです。
そうですね。過去と比べてやや減少傾向にあるのは、総資産が膨らんだため、資産の回転率がやや低下している(キャッシュを貯めこみすぎ?)ことや、財務レバレッジが低くなっている(純資産が増加している)ことが要因ですね。
キャッシュリッチなのは良いことに見えますが、「収益性」の観点からはマイナスに作用するということですね。
なお、同業他社の数字は以下のとおりです。
- 利益率 ⇒ 4.7%
- 総資産回転率 ⇒ 2.16
- 財務レバレッジ ⇒ 1.81
- 利益率 ⇒ 4.4%
- 総資産回転率 ⇒ 1.17
- 財務レバレッジ ⇒ 1.44
「デュポンシステム」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
株価分析
PBR
最後に直近の「株価指標」を確認していきましょう。
直近(6/24時点)のyahooファイナンスにおけるPBRは「3.50」となっています。
「PBR」は、以下の式で計算することができます。
PBR(株価純資産倍率)= 株価÷1株あたりの株主資本
PER
直近(6/24時点)のyahooファイナンスにおけるPERは「31.35」となっています。
「PER」は、以下の式で計算することができます。
PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの利益
PBR、PERともに目安となる水準を上回っていますね。ただ、業績や将来的な増配の可能性なども考えると高すぎるわけではない気もしますね。
「PBR」「PER」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
今回は、みんな大好き「日本マクドナルド」の決算書を分析していきます。