
マヨネーズで有名な食品メーカーですね。パスタソースやドレッシングも好きで、胡麻ドレッシングは常備品になっています。

そうですね。「株主優待銘柄」でもあるので、注目している方も多いのではないかと思います。
「株主優待」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
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主要な経営指標の推移

まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです。


2年前までは比較的安定していたようですが、去年からは売上が下がっていますね。一方で利益水準は維持しているようです。

そうですね。売上が大きく減少している理由は、後述する「セグメント情報」を見ることでわかりますが、業績不振に伴うものではなさそうです。
「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結決算書

次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。
以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。
連結BS

まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。


負債に比べて、純資産の割合が大きいですね。

そうですね。借金に頼らず自己資本を軸とした安定した経営を行っているという状況のようです。

安全性の観点からは望ましい状況ですね。

そうですね。一方で低金利の経済環境であれば、財務レバレッジ効果により収益性の向上が見込めますので、積極的な借金の利用というのも考えても良いかもしれません。
「財務レバレッジ」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結PL

次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。


営業利益が「5.9%」、最終的な利益率が「3.7%」となっていて、利益率があまり高いとは言えなさそうですね。

そうですね。値上げ等によって利益率の確保はできているようですが、原材料費高騰の影響などで高い利益率の実現というところまではいっていないようですね。
以下の決算説明会資料を見ると価格改定により+217億円のプラス効果がある一方で、コスト上昇により△442億円もの影響を受けていることがわかります。


連結CF

最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています。


本業で儲かったお金をもとに将来投資や借金の返済に回しているんですね。

そうですね。分類でいうと「優良型」に該当しますので、キャッシュ・フローのパターン的には問題なさそうです。

「決算書の基礎」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
注記情報

もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。
セグメント情報

キユーピーは「市販用」「業務用」「海外」「フルーツソリューション」「ファインケミカル」「物流」といった事業別に情報の開示をしています。



去年から売上が減少している理由はセグメント情報を見ることでわかるということでしたが、どういうことなんでしょうか。

2年前のセグメント情報を見ることで原因を把握することが可能です。


2年前のセグメント情報では、「物流」という事業セグメントがあり、1,400億円ほどの売上に貢献していました。しかし、2021年度に株式の譲渡により持分法適用会社へ移行したことから、連結売上高が小さくなっています。


なるほど。単純に子会社の数が減ったため、連結上の売上高が減少して見えるということですね。既存事業の業績不振ではないということで少し安心しました。
「持分法」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。

収益の分解

キユーピーは、セグメント情報=収益の分解としており、セグメント情報以上の詳細な分析は開示していません。

そうなんですか。詳細な分析ができないですね。

セグメントが比較的細かく区分されていますので、こちらの情報を利用して分析するのが良さそうですね。
「収益の分解」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「新収益基準」については、以下の記事をあわせてご参照ください。

指標分析

ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。
安全性分析
流動比率

キユーピーの「流動比率」は257.0%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カゴメ ⇒ 169.4%
- キッコーマン ⇒ 288.6%
自己資本比率

キユーピーの「自己資本比率」は66.4%と目安の50%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カゴメ ⇒54.6%
- キッコーマン ⇒ 71.1%
「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。


「安全性」という観点だと特段問題はなさそうですね。
収益性分析

次に「収益性」の指標を見ていきます。
利益率
- 売上総利益率 ⇒ 28.9%
- 営業利益率 ⇒ 5.9%
- 税引前利益 ⇒ 6.1%
- 当期純利益率 ⇒ 3.7%


なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2022年3月期の決算短信より計算しています)。
- 売上総利益率 ⇒ 36.7%
- 営業利益率 ⇒ 7.4%
- 税引前利益 ⇒ 7.3%
- 当期純利益率 ⇒ 5.2%
- 売上総利益率 ⇒ 34.6%
- 営業利益率 ⇒ 9.8%
- 税引前利益 ⇒ 10.5%
- 当期純利益率 ⇒ 7.5%

収益性という観点だとやや物足りない印象ですね。

やはり昨今の原材料(卵など)の物価高騰が響いているようですね。値上げもやむなしといったところです。。
ROA

キユーピーの「ROA」は4.1%と目安の5%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カゴメ ⇒ 4.4%
- キッコーマン ⇒ 8.3%
ROE

キユーピーの「ROE」は6.3%と目安の8%を下回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カゴメ ⇒ 8.5%
- キッコーマン ⇒ 11.7%

ROA、ROEの水準はいずれも目安を下回っていますし、利益水準の向上が課題と言えそうですね。

デュポンシステムによる分解

ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。
- 利益率 ⇒ 3.7%
- 総資産回転率 ⇒ 1.10
- 財務レバレッジ ⇒ 1.53



やはり利益率の改善が課題ですね。総資産回転率などはあまり悪い水準ではないように見えます。

ちなみに会社の目標としては、2030年までにROEを8.5以上の水準にもっていくというのが1つの目安となっているようです。

- 利益率 ⇒ 5.2%
- 総資産回転率 ⇒ 0.86
- 財務レバレッジ ⇒ 1.91
- 利益率 ⇒ 7.5%
- 総資産回転率 ⇒ 1.10
- 財務レバレッジ ⇒ 1.41

原材料価格高騰という厳しい環境が続くことが想定されるので、頑張りどころですね!
「デュポンシステム」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
株価分析
PBR

最後に直近の「株価指標」を確認して分析を終了しましょう。
直近(4/28時点)の楽天証券におけるPBRは「1.18」となっています。
PER

直近(4/28時点)の楽天証券におけるPERは「37.41」となっています。

PBR、PERともに目安となる水準を上回っていますが、そこまで高いという水準ではなさそうですね。優待目的で長期保有ということも考えられそうです。
「PBR」「PER」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
今回は、みんな大好き「キユーピー」の決算書を分析していきます。