「R-1」や「アーモンドチョコレート」など、日常的に購入する商品が多いので、非常に身近な会社ですね。
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主要な経営指標の推移
まずは、有価証券報告書の「主要な経営指標の推移」を見て、会社の全般的な経営状況を把握していきましょう。全体像を把握してから、徐々に細かい注記情報等に深堀りしていく読み方がおすすめです。
「主要な経営指標の推移」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
主要な指標である「売上高(売上収益)」「当期純利益」については、グラフを作成してみましたので、あわせて見てみましょう(単位:百万円)。
過去の水準と比べると、今期は売上がやや少ないように見えますね。一方で、利益は過去の水準よりも大きくなっています。
売上が減少したのは今期から「新収益認識基準」を適用したことによる影響が大きいです(約1,800億円)。この影響を除くと大きな増減はなさそうです。
なお、上記影響はあくまで表示上の組替のため、利益への影響はありません。
売上が減るのに対して、利益が減らないというのはどういうことでしょうか。
従来、販売管理費として計上していたリベート等を「収益のマイナス」として表示していたり、「代理人取引」によって、手数料部分のみを売上計上としていることから、利益は変わらず、収益(売上)が減少したように見えるということです(詳細については、以下の記事をご参照ください)。
「新収益認識基準」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
連結決算書
次に「BS」「PL」「CF計算書」という3つの主要な決算書を見ていきましょう。
以下、いずれも「連結ベース」で分析を進めていきます。
連結BS
まずは「BS」から見ていきます。後述しますが、流動比率や自己資本比率といった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではBSの概況だけ見ておきます。
純資産の比率が多いですし、パッと見た限りだと健全なBSに見えますね。
そうですね。自己資本比率が徐々に高くなっていて、5年前の約52%から約60%近い水準まで上昇しています。また、現金残高も増えている(約270億⇒約650億)ことから内部留保を増やしていると推測されます。
- 【現金預金】2018年3月末残高が26,913百万円に対して、2022年3月末残高は、64,872百万円と大きく増加
- 【利益剰余金】2018年3月末残高が366,276百万円に対して、2022年3月末残高は、560,238百万円と大きく増加
連結PL
次に「PL」を見ていきます。こちらも後述しますが、利益率、ROA、ROEといった指標とあわせて見ていくと、会社の状況をより把握することができます。ここではPLの概況だけ見ておきます。
関係会社の売却益が発生したことによって、税前利益が大きくなっていますね。
そうですね。「主要な経営指標の推移」にて、今期の利益が過去の水準と比べて大きくなっていたのは、関係会社の売却というイレギュラー取引が要因と考えられます。
具体的な取引内容ですが、「MMAG」という子会社の株式を三井化学グループに売却したことにより、32,703百万円の売却益が発生しています。
連結CF
最後に「CF計算書」を見ていきます。営業CFがプラスとなっており、投資CF、財務CFがそれぞれマイナスとなっています。
「為替による変動額」は除いているため、「期首+営業CF+投資CF+財務CF≠期末」となっています(為替影響は+2,931M)。その他、合併に伴うキャッシュの増加(+16M)もあります。
本業で儲かったお金をもとに将来投資や借金の返済に回しているんですね。
そうですね。以下の分類における「優良型」に該当しますので、キャッシュ・フローのパターン的には問題なさそうです。
「決算書の基礎」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
注記情報
もう少し深堀りをするために「セグメント情報」「収益の分解」といった注記情報についても見ていきましょう。
セグメント情報
明治ホールディングスは、「食品」「医薬品」といった事業別にセグメント情報の開示を行っています。
食品だけでなく、「医薬品事業」にも展開しているんですね。
そうですね。医薬品事業では、国内外の医薬品だけでなく、ワクチンの製造・販売などにも展開しているようです(「収益の分解」参照)。
「セグメント情報」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益の分解
明治ホールディングスは商品・製品別に収益を分解して開示を行っています。
私にとってはお菓子のイメージが強かったのですが、一番の主力商品は「ヨーグルト・チーズ」なんですね。
ところで「ニュートリション」とは、なんでしょうか。
「ニュートリション」は、栄養摂取・栄養学といった意味合いで、「SAVAS(ザバス)」ブランドで有名なプロテインや赤ちゃん用の粉ミルクなどに関する事業のようです。
「収益の分解」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「顧客との契約による収益」については、以下の記事をあわせてご参照ください。
指標分析
ここからは安全性や収益性といった様々な指標を見ながら、決算書の分析をさらに進めていきます。まずは「安全性」の指標を見ていきます。
安全性分析
流動比率
明治ホールディングスの「流動比率」は158.9%と目安の100%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カルビー ⇒ 272.5%
- 森永製菓 ⇒ 159.8%
自己資本比率
明治ホールディングスの「自己資本比率」は62.5%と目安の50%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カルビー ⇒ 76.8%
- 森永製菓 ⇒ 61.0%
安全性の観点からは、大きな問題がないように見えますね。同業他社も目安となる水準を超えていますね。
「安全性分析」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
収益性分析
次に「収益性」の指標を見ていきます。
利益率
- 売上総利益率 ⇒ 31.9%
- 営業利益率 ⇒ 9.2%
- 税引前利益率 ⇒ 12.7%
- 当期純利益率 ⇒ 8.6%
なお、同業他社の数字は以下のとおりとなっています(2022年3月期の有価証券報告書より計算しています)。
- 売上総利益率 ⇒ 34.2%
- 営業利益率 ⇒ 10.2%
- 税引前利益率 ⇒ 10.9%
- 当期純利益率 ⇒ 7.4%
- 売上総利益率 ⇒ 41.8%
- 営業利益率 ⇒ 9.9%
- 税引前利益率 ⇒ 21.6%(※)
- 当期純利益率 ⇒ 15.3%
多額の有価証券の売却益計上があったため、税前利益が大きくなっています(売却益21,952Mを除くと、税引前利益率9.5%となります).
森永製菓はイレギュラー要因で高くなっていますが、その影響を除くと、同業他社と比べても、そんなに悪い水準ではなさそうですね。
ROA
明治ホールディングスの「ROA」は8.0%と目安の5%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カルビー ⇒ 7.6%
- 森永製菓 ⇒ 13.3%
ROE
明治ホールディングスの「ROE」は13.5%と目安の8%を上回る水準となっています。また、同業他社の数字は以下のとおりです。
- カルビー ⇒ 10.3%
- 森永製菓 ⇒ 22.0%
ROA、ROEの水準はいずれも目安を上回っていますし、収益性についても大きな問題はなさそうです。
デュポンシステムによる分解
ここからはROEをさらに分解して分析を進めていきます。
- 利益率 ⇒ 8.6%
- 総資産回転率 ⇒ 0.93
- 財務レバレッジ ⇒ 1.69
- 利益率 ⇒ 7.4%
- 総資産回転率 ⇒ 1.03
- 財務レバレッジ ⇒ 1.36
- 利益率 ⇒ 15.3%
- 総資産回転率 ⇒ 0.87
- 財務レバレッジ ⇒ 1.65
他社の数字を見てもだいたい同じ水準のようですね。総資産回転率も悪くないですし、レバレッジも高すぎるというわけではなさそうです。
その他のデュポンシステムの事例については、以下の記事をあわせてご参照ください。
株価分析
最後に「PBR」「PER」といった株価関連の指標を見て分析を終わりにします。
株価分解
まずは、2022年3月時点における株価の構成要素分解をしていきます。
「株価」は、以下の式で計算することができます。
株価 = PER × EPS(一株あたり純利益)
PBR
直近(7/29時点)のyahooファイナンスにおけるPBRは「1.45」となっています。
「PBR」は、以下の式で計算することができます。
PBR(株価純資産倍率)= 株価÷1株あたりの株主資本
PER
直近(7/29時点)のyahooファイナンスにおけるPERは「15.66」となっています。
「PER」は、以下の式で計算することができます。
PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの利益
PBR、PERともに目安となる水準を上回っていますが、そこまで高いという水準ではなさそうですね。
「PBR」「PER」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
「決算書」ってどこで見れるの?
上場している会社の決算書は以下のページから見ることができます。
- 会社のHP
- EDINET
①の会社のHPから見るときは「IR情報」というページ見れることが多いです。その他「決算情報」等会社によってHPの構成や呼び方は違いますが、これらのキーワードで簡単に見つかると思います。
②の「EDINET」は、金融庁のページです。「書類検索」→「会社名を検索」すると、各社の決算書類を見ることができます(以下にリンクを張っておきます)。
(EDINET) https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
非上場(上場していない)会社の決算書は、株主にならないと見れないケースも多いです。株主になった場合は、株主総会の招集通知に決算書が添付されていますので、ここから見ることができます。
今回は、日本を代表する食品メーカーである「明治ホールディングス」の決算書を分析していきます。